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2006年5月24日 (水)

砂漠で洪水

ある年の12月半ば、日本から来た客人を連れ、車3台でいつもの「赤い砂漠コース」へ行きました。赤い砂漠が横たわる景色を十分に堪能してもらった後は、さらに車で土漠の奥に分け入りました。土地が浸食されてできた奇怪な景観を楽しんでもらおうと考えたのです。進む道は人工的に作られたものではありません。長い年月をかけ、水によって浸食されたもので、くねくねと曲がり、両側には20メートルほどの崖が切り立っています。言ってみれば谷底を走っているのですが、砂漠地帯に独特の「ワジ (ワーディ)」つまり「涸れ川」なので、水は流れておらず、平らで砂利が敷き詰められた感じは道路としてちょうど良い具合のものです。その日は、珍しく雨が降り出しそうな曇り空でした。若干不安を感じつつも、そんなワジの道を走っていると、案の定最初の一粒が来ました。「あぁ、雨かぁ」と思ったのもつかの間、あっという間に、それこそ一瞬で、我々の車列は豪雨に包まれてしまいました。ヒョウまじりの土砂降りで、ワイパーを使っても前方は真っ白でまったく何も見えません。こんな雨は日本でも経験したことがありませんでした。先頭車両がハザードランプを出し、ゆっくりとその場に止まりました。

5分ほど止まっていると、雨足は急速に衰えてきましたが、一方で、ワジに一気に水が流れ始め、5cm、10cmと刻一刻、水かさが増してきました。両側の崖の上からは水が滝のように流れ込んでいます。恐怖にかられた私たちは、あわてて車を方向転換し、もと来た道をそろりそろりと引き返し始めました。泥でにごった水が流れているため、地面の状態がまったくわかりません。エンジン下部を岩にこすってしまったらそれこそ閉じこめられてしまいます。そうやっている間にも水かさはどんどん増え、20cmくらいの濁流になったときは「ついに車を乗り捨てか」という最悪のシナリオが頭をよぎりましたが、ほどなく見覚えのあるカーブにさしかかり、ようやく「助かった」と思いました。そのカーブを曲がれば土地が少し高くなっていたはずです。しかし、実際にそこを曲がってみると、確かに小高くなっていて一時的に水は回避できたものの、もう1本、幅30メートルほどの濁流を渡らなくてはなりませんでした。そこさえ抜けられればもう水はありませんが、流れに入ってみると、水かさが40cmはあります。これでは我々の車は走れません。川の向こうでは大型トラックがこちらの様子をうかがっていました。仕方なく水かさが減るのを待っていましたが、2時間以上待っても期待したほど水は減りません。そうこうしているうちに辺りはだんだん夕闇に包まれてきました。「もうこうなったら度胸で渡るしかない」とみんなで気勢を上げると、1台、また1台と川の流れを突破していきました。この時、誰も岩にぶつからなかったのは奇跡かもしれません。それにしても、砂漠で洪水って本当にあるんですね。自分が体験するとは夢にも思いませんでした。
024kouzui

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