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2006年6月20日 (火)

汚染天国

エジプト赴任が決まり、出発を2週間後に控えたある日、本社で「参考までに」と見せてもらった資料に冷や水を浴びせられました。世銀やWHOが調査したエジプトの公害の報告書です。カイロ近郊の湖は、淡水魚が豊富でカイロにたくさん出荷されていることで有名です。しかしその水質は、いろいろな重金属が世界基準の10倍も含まれていて、実際に奇形魚も多発しているとのこと。「まさかナイル川も…?」と心配になりましたが、大気汚染はさらに深刻でした。世界基準など軽くオーバーしています。水はなんとかなるけれど、空気を吸わないわけにはいかないし…。報告書を見せてくれた人に「これ発表されてるの?」とたずねると、「そんなの発表したら暴動になるでしょ」とのこと。あーあ。ただでさえエジプト赴任は気が重かったのに、さらに出鼻をくじかれました。それから慌てて高性能な空気清浄機を購入したことは言うまでもありません。2週間後、暗鬱な気持ちでカイロ空港に降り立ちました。

カイロでは、昔から外国人がよく住んでいるナイル川の中州「ザマレク」に家を借りました。立地条件は抜群でしたが、築20年以上の古い建物で、ドアや窓枠は隙間だらけでした。カイロの空気は見るからに排気ガスで煙っています。家の中くらいきれいな空気を吸いたかったので、家に入ってまずやったのは、シリコンを買ってきて隙間を充填することでした。ひと通り隙間という隙間を埋めたつもりでしたが、窓を閉め切っていても、1日たてばうっすらと砂がつもってしまいます。しかし砂以上に私を苦しめたのは、なんだかよくわからない「黒いネバネバ物質」でした。掃除は毎日やっていましたが、テーブルを雑巾で拭くと砂と一緒に黒いものが付着します。おそらく排気ガスのNOxなんだと思いますが、手で確かめてみると粘つく感じがあり、「毎日これを肺に吸い込んでいるのか」と思うと本当にやるせなくなりました。後で聞いたら、カイロには200万台の車が走っていて、そのうち20% (40万台) がタクシーだけれど、これが社会主義時代に東欧から輸入されたものでもうほとんどがボロボロ、大気汚染の元凶になっているとのことでした。

汚染された淡水湖の漁業とかボロボロのタクシーとか、政府が規制すれば良いのにと思うのですが、こういう低所得者層はイスラム原理主義者の支持基盤なので、政府としても対応に苦慮しているようです。以前、淡水湖で多発している奇形魚のことをある国会議員が告発しようとしたら、何者かに殺されてしまったそうです。やっぱり原理主義者が?。カイロに出回っている淡水魚がだめなら、アレキサンドリアの海の魚は大丈夫だろうと思うかも知れませんが、やはりかなりの汚染があるとのことで、「毎日食べ続けるのは自殺行為」と言う医者もいました。カイロでも買うことができるカラスミは、魚の卵だけあって重金属がたまりやすいものです。「子供がほしいのなら食べない方が良い」と言われていましたが、これはけっこう食べたかな、おいしかったし。ルクソールのテロで外国人観光客が来なくなり、カイロのほとんどのタクシーが廃業や営業時間短縮に追い込まれた結果、劇的に空気がきれいになったのには驚かされました。

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