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2006年7月13日 (木)

管理民族

「アジア=農耕民族」「ヨーロッパ=狩猟民族」とは良く言われることです。中東に赴任するまでは、なんとなく世界の全ての地域がどちらかに属するものと思っていました。しかし、アラブ人はとてもこの2つにあてはめることはできません。あえて言うならば「管理民族」です。遊牧民の仕事は、第一にヒツジやラクダの群れを管理することです。草を食べすぎないよう適度に移動し続けること、どこかに行ってしまわないよう常に見張っていること、他者とのテリトリーの調整、間引きや繁殖の調整などなど。また、古来アラブ人は体力を使わずに頭で儲けることが最良という考え方を持っています。つまりビジネスマンですね。実際、シルクロードを使って中世東西世界の物流を担っていたのは、他でもないアラブ・ムスリム商人たちでした (他にもキャラバン隊を警護したり通行税を課すなどもした)。現代に目を移すと、アラビア湾岸諸国では莫大な石油収入を利用して世界的に投資・投機を進めるとともに、国内においては労働力のほとんどを出稼ぎ労働者でまかなっています。所得水準の高さから、一般庶民であっても東南アジアからの出稼ぎ人たちを使用人として雇うのは普通ですし、こうして資産や外国人労働者を管理することで快適な生活を享受しているわけです。管理する対象が変わっただけで、本質は昔も今も変わりません。ただし、まったく何もせずに儲けるのはイスラム教ではいけないことだとされていて、イスラム系の銀行では預金に利子がつきません。そんなところに預ける人っているのかな?

サウジアラビアにいた時、一度職場に水を2カートン買って持っていきました。車のトランクから出して職場の玄関に置くと、すぐに受付のサウジ人スタッフが「バングラデシュ人 (職場の労働者) を呼んできてあげる」と声をかけてきました。車を駐車場に止め、その場に戻ってくると、まだ誰も来ていません。2階の自分のオフィスに運ぶだけですから、わざわざ人を呼ぶほどのことではありませんし、何よりいつ来るかわからない人を待ち続けるよりは、自分で運べばすぐに終わることだと思い、おもむろに水を抱え上げて運びはじめました。階段を上っている途中、声をかけてくれた人が戻ってきましたが、結局誰も連れてきていなかったので「自分で運ぶからもういいよ」とひと声かけると、彼は私の方をじっと見て小さな声で「ファッラーフ (農民)」とつぶやきました。農民とはすなわち、頭を使わずに体を使って働く人のことです (そもそも誤解がありますが…)。「力自慢の能なし野郎」といったところでしょうか。「自ら体を動かさずに、国を発展させることができるのか」というテーマは時々サウジ人スタッフと議論しましたが、実際問題、サウジアラビアなど湾岸産油国はそうやって国を発展させてきたわけですから、正直こちらはぐうの音も出ませんでした。「石油はいつかなくなる」というのがこちらの精一杯の反論でしたが、ある日新聞で「石油埋蔵量はあと160年分」という記事を見てガックリときました。さらに、実はサウジアラビアには他にも金を含めて天然資源の鉱脈が無数にあるそうで、今採掘しないのは市場価格を破壊するだけだからとのことでした。はぁ~、神様って不公平だ…。

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