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2007年1月30日 (火)

エチオピア料理

■インジェラ
テフという小さな小さな実をひいて粉にし、水でといて発酵させてから薄いクレープ状に焼く、エチオピアの主食。インジェラの上に料理をのせ、手でちぎりながら食べます。ボソボソしていて少し酸味があり、見た目も灰色がかっていることから、外国人には多少とっつきにくいかもしれません (中には雑巾などと言う人も…)。しかしテフにもいろいろあって、同じレストランに通っていても、ごくたまに白っぽくて酸味がほとんどないものが出たりします。そんな時はもう大当たりで、モチモチとした食感がうれしくてほっぺたが落ちるほどです。エチオピアではパン (ダッボ) も普通に食べられていますが、エチオピア料理には、やはりインジェラの方が合うと思います。というかインジェラを食べるために料理の形が決まってきたのかもしれません。ひたしたりくるんで食べられるものということで。インジェラが焼けたらかまどの横にばさばさと重ねていくわけですが、家庭ではたいてい何日分かまとめて焼くため、しっとり湿ったインジェラには3日もすると当然カビが生えてきます。しかし日本人がお餅のカビをあまり気にしないように、田舎の方ではエチオピア人もけっこう平気でそんなインジェラを食べています。一度、ブタジラという地方の町でレストランの調理場をのぞかせてもらったとき、温熱器の上に重ねられたインジェラからパァーっとゴキブリが20匹ほど散っていくのを見ました。ま、暖かいからゴキブリにも居心地は良いんでしょうけど。エチオピアのゴキブリは日本のとはちがって色も薄茶でどこか弱々しいからあまり気にはなりませんけど。その後レストランでインジェラ食べましたけど…(泣)。

毎年6月中下旬に雨期が始まると、カラカラに乾燥していた畑にも湿り気がもどり、農家は牛を使って地面を耕し始めます。8月頃、畑にテフの種を蒔きますが、手でばさばさと蒔いていくのがなんともおおざっぱです。あとは十分な雨さえ降れば、テフはすくすくと育っていきます。9月下旬に雨期は終わりますが、あとは12月頃まであまり手入れもせず、実が熟すのを待つばかり。刈り取ったあとしばらく野積みで乾燥させ、牛やロバを使って脱穀します。この脱穀方法は12月のエチオピアの風物詩ともいえなんとも心が和む風景ですが、やはりきわめて原始的かつ非効率。牛が一所懸命働いているすぐそばでロバがムシャムシャ藁を食べていたりします。脱穀したあと地面から拾われ袋詰めされたテフには1割くらいの土が混じっていると言われ、「インジェラの味は土の味」という笑えない話も。黄金色に揺れるテフ畑にはしみじみとエチオピアの豊かさを感じますが、よく考えたら弥生時代くらいの農耕を未だに続けているというエチオピア人の筋金入りの頑固さの象徴かもしれません。

■ドロワット
きざんだタマネギをじっくりと炒めてから香辛料と一緒にことこと煮込み、鶏肉を加えたもの。必ずゆで卵が入っています。ドロは鶏肉、ワットはいわばシチューの意味。ガイドブックには一番の高級料理などと書かれていますが、値段というよりも、ここ一番の料理といった意味合いでしょう。鯛の尾頭つきみたいなものかな。カイ (辛い) とアリチャ (辛くない) がありますが、普通は辛いものが出てきます。とてもおいしいのですが、辛さもエチオピア料理一と言われています。ちなみに、エチオピア人は鶏肉の皮を食べないようで、ドロワットの鶏肉にも皮はついていませんし、そもそもスーパーでは皮をはがした鶏肉が売られています。皮がおいしいんだけどなぁ。このおいしさをあらためてエチオピア人に教えてあげたい (何度も拒否されたけど)。しかし鳥インフルエンザの風評のせいで、鶏肉が入っていない (ゆで卵だけの) ドロワットを食べたときはなんとも複雑な気持ちになりました。親子丼の鶏肉抜き、いやヘタしたら牛丼の牛肉抜きと同じレベルかも。鳥インフルエンザが人間に感染する確率より何千、何万倍も高い確率であらゆる病気が蔓延しているエチオピアなのに、変なところを気にするなぁと思いました。

■カイワット
ちゃんと言うと「ズルズルワットのカイ」のようですが、カイワットといえば一般的には牛肉の辛いシチューを指します。インジェラとの相性は抜群で、個人的には1年間、月・火・木と職場でランチにカイワットを食べ続けました (水・金はツォム=肉断ちの日で肉料理がなかった)。最初は直径60cmのインジェラ (大人1人の標準) を半分くらいしか食べられませんでしたが、そのうち1枚をなんとか食べられるようになりました。食べ残すと周りのエチオピア人がすごく気にするのでいつもそれなりにがんばって食べていました。カイワットは脂っこいので、食べ過ぎると確実に太ります。地方も含めてどこで頼んでもカイワットはだいたい外れがなく、私自身は不味いカイワットにあたったことがありません。異常に辛いというのはありましたが。辛くないアリチャと合わせてインジェラに盛る「ミスト」という注文方法もありますから、辛いのが苦手な方はどうぞ。

■トゥブス
カット肉を炒めたもの。専門店では、他に何も入れずにとにかく牛肉だけ、表面をカリッと仕上げて出します。高級レストランではトマト、タマネギ、青唐辛子と一緒に炒めるスタイルが多いようです。干し牛肉を炒めたものもありますが、これは相当脂っこいので、おかずと言うよりおつまみ感覚だと思います。山羊肉を使ったものがヤバグトゥブスで、日本人の口に良く合うようです。メニューにスペシャルトゥブスとあったらだいたいヤバグトゥブスで、特別なコンロに乗せられて出てきます。辛くないし、私も大好きです。普通のトゥブス (牛肉) は、あまり肉食に慣れていない日本人にとっては少々つらいものがあります。ナザレットという大きな町にある有名なトゥブス専門店で食べましたが、味がほとんどついていないし脂っこくて焼きすぎで肉が固いので、あまりたくさんは食べられませんでした。一緒に行ったエチオピア人がものすごい勢いで食べていたのには驚きました。

■生肉
エチオピア料理といえば生肉をはずすことはできません。まさにそのまま肉のかたまりを食べるものと、ひき肉に香辛料とバター (ケベ) を混ぜたものがあります。生肉はナイフでひと口大に切りながら、唐辛子ミックス (ミツミッタ) やマスタード (サナフィチュ) をつけて食べます。エチオピア人はこれが大好きで、確かに良い肉にあたれば、トロのようなこってりとした味わいがあります。しかし、お腹をこわす確率もかなり高いので要注意です。ひき肉の方はクトゥフォといい、ほんのわずか火を通したもの (レブレブ) と完全に火を通したものがあります。肉は火を通しすぎない方がおいしいに決まっていますから、クトゥフォを食べるなら断然レブレブがおすすめです。私はそれまで日本でもユッケなど生肉を食べたことがありませんでしたが、エチオピアで生肉のおいしさを知りました。日本に帰ってきてユッケを食べた時は思わず「クトゥフォの方が断然旨い」とつぶやいてしまいました。ブタジラという町はクトゥフォで有名なだけあって、やっぱりおいしいと思いました。「あのレストランは調理場にゴキブリが何千匹もいるんだろうなぁ」という恐怖を差し引いても、一生のうちもう一度くらいはクトゥフォを食べに行きたいと思ったりもします。ちなみに「日本人は魚を生で食べるぞ」と言うと、エチオピア人は「あぁ、南部州にもそんな人たちがいるよ」とわりあい親近感をもって話してくれます。エチオピア人と日本人て共通点が多い?。

■シュロワット
エチオピアのクリスチャン (オーソドックス) は、2月から4月にかけて2ヶ月ほど断食 (ツォム=肉断ち) をします。それ以外にも、毎週、水・金の2日間はツォムの日で、肉、卵、乳製品は食べません(なぜか魚は良い)。レストランでもツォムの時は肉を出さないところが多いのですが、そのためエチオピアにはいろいろなツォム料理があります。代表的なものがシュロワットで、これは豆のワットです。どんな田舎に行ってもシュロワットを置いていない食堂はありません。というか、シュロワットしかないところもありますが。ある年の4月にエチオピア人と一緒に地方出張に行った時のこと、ツォム期間中だったので当然レストランにはシュロワットしかなくて、それでもそのシュロがめちゃめちゃおいしかったので、エチオピア人が「あまりにおいしいからもしかしてバター (ケベ) を使っているのかな」などと不安そうに食べていたのがおかしかったです。「やばいかもしれない、でも手が止まらない」という状態で。インジェラにシュロワットや野菜などツォム用の料理を盛り合わせたものをベイアイネットといいます。

他にもクックル (山羊肉のスープ) やトリッパ (内臓の唐辛子煮込み) ドゥレット (内臓を香辛料で和えたもの) などそれなりに料理はありますが、ここに記したものを食べれば、だいたいエチオピア料理は征したと言えます。全体として、エチオピア料理は外国人の口に合うと思いますし、世界的に見ても、かなりおいしい部類だと感じますが、メニューがあまりたくさんありません。例えばトゥブスに鶏肉を使うとか、あっても良さそうなものがありませんし、その地方独特の郷土料理というものにもお目にかかったことがありません (あくまでもレストランでの話ですが)。

さらに、どの地方に行ってもそれぞれの料理の味がほとんど変わりません。レベルが保たれていてどこで食べてもおいしい、と言えるかもしれませんが、逆に、どこに行っても目新しいものは食べられない、とも言えます。これは少し贅沢な注文ですね。それから、見た目はもうひとつでしょうか。なんかどれも茶色っぽくてぐちゃぐちゃで。あ、あと気になるのはデザートがないことです。これだけおいしい料理を創出した人たちなのに、しめの甘いものがないのはちょっと寂しいです。ま、しめはおいしいコーヒーで十分なんですが。

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コメント

美味しそうですねー。私はアフリカに言ったことないんですけど、「アフリカを食べる」の中で激賞されていたエチオピア料理には以前から興味がありまして・・。フランクフルトでエチオピア料理の店を見つけて、インジェラとワットを食べたときは、感涙に咽んだものでした、というのは大げさですが、一緒に出てきたスパイスのつぼに、エチオピアの味覚の奥深さを感じました。ちょっとすっぱいインジェラは、自分としては嫌いではなかったです。「雑巾」とは、確かに言い得て妙ですね。クトゥフォって美味しそうですね。一度食べてみたいです。

投稿: RH | 2008年6月12日 (木) 23時40分

エチオピア料理をおいしいと言ってもらえると、なんだか嬉しくなってきます。「アフリカを食べる」という本、さっそくAmazonで買ってみます。

投稿: shukran | 2008年6月14日 (土) 04時29分

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