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2007年2月 9日 (金)

アフリカのHIV/AIDS

■アフリカの現状
UNAIDS/WHOの報告によれば、2003年のHIV感染者数は世界全体で約4000万人になったそうです。地域別に見ると、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国が突出して高い割合を示しています。この地域は、人口でいえば世界全体の10%程度ですが、HIV感染者は実に2660万人 (66.9%) と、極めて高い数字になっています。地域では毎年310万人が新たに感染し、230万人が亡くなっていると言われています。一刻も早く効果的な措置を講じなければ、HIV/AIDSによって国が滅亡してしまうと警告されている国さえあります。

ここ数年、HIV/AIDSの流行は落ち着いているようですが、それは感染者数が減少しているということではありません。地域の感染者のうち女性 (少女を含む) は57%に上り、これは世界全体の女性感染者のうち、4分の3がこの地域に集中していることを示しています。また、どの国においても、女性は男性よりも若年齢で感染していることが報告されています。特にサハラ以南アフリカ諸国では、15〜24才の若い女性の感染者が多く、男性10人に対して女性は36人に上ります。

南アフリカ共和国は世界でもっともHIV感染者が多く、2003年の報告では、人口の21.5%、実に530万人の感染者 (うち女性は290万人) がいるとされます。ボツワナ、中央アフリカ共和国、レソト、マラウィ、モザンビーク、ルワンダ、スワジランド、ザンビア、ジンバブエの9ヶ国では、HIV/AIDSの増加により、平均寿命が40才以下となりました。ジンバブエでは、平均寿命が1990年の52才から、2003年には38才にまで短くなっています。

エチオピア、ケニア、ウガンダの東アフリカ諸国では、HIV感染者が減少の傾向を見せています。特にウガンダでは、1990年代の感染率13%から、2003年には4.1%にまで低下しました。ブルキナファソ、コートジボワール、ナイジェリアなど西アフリカ諸国も、HIV感染者はここ数年減少していますが、特にナイジェリアは感染率5.4%、感染者360万人と、未だ世界第3位のHIV/AIDS人口を抱えています。

■HIV/AIDS統計 (2003年)
1) スワジランド(38.8%=22万人)
2) ボツワナ  (37.3%=35万人)
3) レソト   (28.9%=32万人)
4) ジンバブエ (24.6%=180万人)
5) 南アフリカ (21.5%=530万人)
6) ナミビア  (21.3%=21万人)
7) ザンビア  (16.5%=92万人)
8) マラウィ  (14.2%=90万人)
9) 中央アフリカ(13.5%=26万人)
10) モザンビーク(12.2%=130万人)
11) タンザニア (8.8%=160万人)
12) ケニア   (6.7%=120万人)
13) ナイジェリア(5.4%=360万人
14) エチオピア (4.4%=150万人)
15) コンゴ   (4.2%=110万人)
(参考)インド(0.9%=510万人)、アメリカ(0.6%=95万人)

注) HIVとエイズ
HIVとは「ヒト免疫不全ウイルス」という病原体のことです。このウイルスに感染した全経過をまとめてHIV感染症と言います。エイズ (AIDS) は「後天性免疫不全症候群」の略で、HIVに感染することにより体の免疫力が失われ、いろいろな合併症を引き起こす病気です。HIVに感染しているがエイズを発症していない患者をHIV感染者、エイズを発症している患者をエイズ患者と言います。

■エチオピアの現状
エチオピアでは、統計によって数字は異なりますが、現在もっとも多く見積もって220万人のHIV感染者がおり、そのうち4分の3は女性であるとされます。エチオピアの場合、全人口の85%は都市ではなく農村部に住んでいます。多くのエチオピア人が、HIV/AIDSは都市部の売春婦が患う病気と考えているのに対し、実際には農村部での感染者数が多いことが報告されています。エチオピアの平均寿命は女性51才、男性53才と低く、また乳幼児死亡率が1000人中97人と高くなっているのは、HIV/AIDSが大きな原因を占めています。以下に記すのは、エチオピアの人々の間で広く語られている、HIV/AIDSに関する間違った知識、迷信、伝統的価値観です。

▼処女とのセックスは完璧に安全で、男性の感染を治すこともある。▼西側諸国あるいはCIAが、アフリカの貧しい人々を殺すためにHIVウイルスを作り出した。▼HIVウイルスは人口増加を抑制するために作り出された。▼女性が男性にコンドームを使うよう頼むことは、とても不貞なことである。▼コンドームの中にはHIVウイルスが入れられている。▼もしニワトリがコンドームを食べると、その卵はHIVに感染する。▼男性の割礼はHIV/AIDSの予防に有効である。▼HIV/AIDSはアフリカだけでおこっている。▼HIVは握手をするだけでうつる。また、同じ食卓ナイフを使ったり同じ席に座ってもうつる。▼太った売春婦は安全である。▼1人と1回だけセックスをしていればHIVには感染しない。▼男性の髪の毛が細くまっすぐになったり、肌の色が変わってきたら、HIVに感染した証拠である。

▼外国人はHIVに感染しない。▼農村の女性・少女は安全である。▼コンドームを2個使うと安全である。▼セックスのあとにペニスを洗うと感染しない。▼HIV/AIDSは最近のことではなく、エチオピアには昔からあった。▼夜暗くなってからはHIVには感染しない。▼トウガラシを食べ、強い地酒を飲んでいればHIVには感染しない。▼HIV/AIDSは都市部でのみ流行している。▼食べ物を十分に食べていれば感染しない。▼HIV/AIDSは人々の思考を操作する政治的ツールである。▼HIV/AIDSは神が与えた罰であり、人類は何もできない。▼痩せた人は感染しやすい。▼HIV/AIDSは神が作ったものではないから、すぐになくなる。▼HIV/AIDSに一度感染すれば、二度と感染の心配はない。▼1日6回セックスをすれば、感染は最小限に抑えられる。

アジスアベバにはHIV/AIDS検査をする病院、クリニック、ラボがたくさんあります。このような機関で検査をする人のうち、陽性の割合は1985年にわずか1%だったのが、1998年には74%になったそうです (あくまでも割合。「やばい」と思って検査するので割合は当然高い)。また、HIV/AIDSの妊婦から生まれる子供は、30〜35%が感染してしまうそうです。エチオピア政府は各国から援助を受け、町の大通りや学校の構内に、コンドームの使用を奨励する看板を立てています。写真の大きな看板は、1箱4個入り1ブル (13円) のコンドームの広告です。2003年度ミスエチオピアも宣伝に一役買っています。コンドームの値段はとても安く設定されていますが、値段の問題ではなく、敬虔なクリスチャンが多いが故、エチオピアではコンドームの普及が進んでいないと聞きました。(バチカンが唯一認める避妊法はオギノ式だとか)

一般的に、途上国では日本などの先進国よりも「死」が身近に感じられます。私がエチオピアにいた3年半の間、職場のスタッフ、その家族、使用人の家族など、近い関係者だけでも亡くなった人は10人に上ります。その中にはAIDSを患っていた人もいたと聞きました。このように「しょっちゅうお葬式がある」ためか、私の目にはエチオピア人が死を素直に受け入れすぎるように映りました。彼らの本当の心の内はわかりませんが、死というものに対してもう少し抗っても良いような気がします。少なくとも、女性 (妻) は男性 (夫) に対して「コンドームをつけて」と言う権利があると思うのですが。

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