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2007年2月 8日 (木)

コチョ

エチオピア人の主食としては、「テフ」から作られるクレープのようなパン「インジェラ」がもっともポピュラーですが、もうひとつ「コチョ」という食べ物を紹介します。コチョは、エンセーテ (ニセバナナ) の澱粉を利用して作られます。

■エンセーテ
和名ニセバナナというだけあって、外見はバナナとかなり似ています。しかし、単純に見分ける方法としては、「葉っぱにまとまりがあるのがエンセーテ、ないのがバナナ」と聞きました。なるほど、これまで見てきた限りでは、その法則は当てはまります。エチオピア国内では主に南部と南西部地域が栽培地です。アジスアベバから南部州アワサを通ってケニヤ国境に向かう幹線道路を走っていると、アワサまではテフと小麦の畑が広がっていますが、アワサを越えると急に景色が変わり、一気にエンセーテだらけになります。コーヒー畑とエンセーテ、個人的にはこれが南部州アワサ以南のイメージです。

エンセーテは根茎を持つ多年草です (ちなみにバナナは1株が1年で1房実をつけると枯れていきます)。エンセーテ栽培地域では、息子がある程度大きくなると、親は土地を分配しエンセーテを植えてあげるそうです。エンセーテが成長し、食物として利用できるようになるころ、息子もそろそろ結婚適齢期、というサイクルがあると聞きました。南部地域ではどの家も周囲をぐるりとエンセーテに囲まれています。テフとはちがって、エンセーテは1年中いつでも利用できます。いつでも食べ物があるという安心感は、何物にもかえ難いものです。ご飯が確保できるようになってから結婚するというのも、見事な民族の知恵ですね。

■コチョ
エンセーテの根茎を蒸して食べる調理方法もありますが (残念ながら私は未食)、コチョに関してはエンセーテの葉の茎の澱粉を使うそうです。葉の茎をしごいて澱粉を採取したあと、それを発酵させてタネを作ります。発酵させることによって、チーズのような風味が生まれます。実際に食べる時は、エンセーテの葉っぱに薄く延ばしてはさみ蒸し上げます。この時、葉っぱの香りがコチョにうつるため、さわやかな風味になります。蒸したばかりの物はプルプルしていて、食感はちょっと堅めのウイロウといったところです。

■味
インジェラとともに、コチョはエチオピアの二大主食でありながら、その味については、外国人からの評価はあまり高くありません。それは何故かと推察すれば、お米やパンともっとも異なる点として、噛んでも噛んでも味が変わらないという点につきるのではないでしょうか。お米もパンも、噛めば噛むほど口の中に甘みが広がります。しかしインジェラとコチョは、いつまでたっても酸味のまま。コチョの味自体けっして悪いわけではありませんが、これが「なんとなく味気ない」と感じる最大の理由でしょう (もしかしてずーーーっと噛んでいれば甘くなるのかも)。

コチョは主に南部地域の主食ですが、大きなレストランではどの地域であってもたいていインジェラと一緒に出てきます。私の場合「味気なさ、チーズ臭、酸味」のトリプルパンチのため、けっして好きとは断言できないものがあります。ただし、火で軽く焼くと香ばしさが出て俄然おいしくなることも事実で、レストランで出てきたら必ず焼いてもらうようにしています。南部州ディラに行った時のことですが、その時昼食で食べたコチョは、それまでのイメージを覆すとてもおいしいものでした。ほとんどのレストランでは、コチョは葉っぱからはがされて出てきます (そして冷えて固くなっている)。しかしディラでは、エンセーテの葉に挟まれたまま、蒸したての状態で出てきたのです。まだ暖かいコチョを葉っぱからはがした時に立ちのぼってきた新鮮な緑の香りは、十分に食欲をそそるものでした。少し薄め (5〜6mm) で中心までよく火が通っており、手に持つとプルプルとふるえます。食感も上々、チーズ臭と酸味もほとんどありません。蒸したてのコチョはこんなにおいしいのかと驚きました。

その日はディラからアワサにもどり、夕食では再びコチョを食べました。南部州ではクトゥフォ (牛挽肉にバターと香辛料をまぜたもの) とコチョの組み合わせが名物です。クトゥフォ・レブレブ (若干火は通してあるもののほとんど生のクトゥフォ) を注文すると、一緒にインジェラとコチョが出てきました。しかし他の大部分の店と同じく、コチョは葉っぱからはがされ、冷めた状態です。しかも少し厚め (7〜8mm) なので、中まできちんと蒸されていないのか、中心部は白っぽくぼそぼそしています。結局、そのコチョは一口食べただけで残してしまいした。アワサでは一番おいしいと評判のレストランだっただけに、残念でした。やはりコチョは作りたてが一番です。各家庭では毎回食べる分だけ作るでしょうから、みんな毎日さぞおいしいコチョを食べているんだろうなぁと羨ましくなります。

■まとめ
エチオピア南部地域は、中北部地域にくらべ気温が高く、年間降雨量もずっと恵まれています。エンセーテの成育条件に、エチオピア南部地域はピタリとあてはまったようです。放っておいても育つしいつでも食べることができるエンセーテは、飢饉のたびに不作に悩むテフや小麦とちがって、食料供給源としてはずっと安定していると思います。もっと少ない水、低い気温で栽培する技術が確立されれば、食糧危機をのりきる貴重な作物になるかもしれません。

写真1:南部の田舎の家はエンセーテに囲まれている
写真2:コチョのタネ (デンプン)、南部のある町の青空市
写真3:生クトゥフォとコチョ (手前)とインジェラ(奥)

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