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2007年2月 4日 (日)

アクスム

1世紀に建設され、4世紀半ばに最盛期を迎えた古代エチオピア王国の都アクスムには、今でもその繁栄を物語る数々の遺物が残されています。中でも花崗岩で造られた数々のオベリスク群は、1980年、世界遺産に登録されました。もうひとつ、アクスムを「聖都」たらしめているものは、エチオピア建国の伝説です。

紀元前10世紀頃、エチオピア、スーダン、イエメン一帯を治めていたシバの女王は、賢者として名高いエルサレムのソロモン王を訪ねます。そこで王の子を宿し、生まれた子がメネリク1世としてエチオピアの初代国王となりました。成長し自らの素性を知ったメネリクは、ソロモン王を訪ね、数年間の教育を受けたあとエチオピアに帰りますが、従者の1人がモーセの十戒を入れた聖櫃を持ち出してしまったのです。現在も、聖櫃はアクスムの「シオンの聖マリア教会」にあるとされます。

■インプレッション
毎年2月から4月にかけて、エチオピア正教徒はツォム (肉、卵、乳製品を食べないこと、夜の生活もしないとか) を行います。年によってツォムが明ける日は異なりますが、ツォム期間の最後の週末の金曜日は「Good Friday」という休日になり、休日の少ないエチオピアではめったにない3連休になります。その休暇を利用して、1泊2日のアクスム旅行に出かけました。1泊旅行なら土日で行けると思うかもしれませんが、エチオピア航空国内線をそれほど信用していない私にとっては、何があるかわからないということで、やはり3連休の3日目を予備日としたかったわけです。そんなこんなで、Good Friday の朝、濃霧のためいきなり2時間遅れと出鼻をくじかれましたが、なんとかアジスアベバを出発しました。

かつてアクスムには64の大オベリスク、246の中オベリスク、さらに多くの小オベリスクがあったとされます。しかし現在、きちんと立っていて、彫刻が施された立派なものは1本しかありません。世界遺産にも登録されているのですが、彫刻もシンプルな幾何学模様で、さすがにエジプトと比べるのは酷ですが、やはり拍子抜けという感は否めません。古代アクスム王国については未だ85%が謎のままだそうですが、もっと歴史が明らかになり、ガイドが蘊蓄を語るようになれば、もう少し楽しめるかもしれません。

その昔、ムッソリーニがアクスムから持っていった大オベリスクが、2005年4月にイタリアから返還されました。現場では、このオベリスクをもとあった場所に立てるため、すでに大きな穴が掘られています。しかし、まるでタイミングを合わせたかのように、UNESCOの調査チームが、その場所は地下に墳墓のような遺跡があり、重いオベリスクは立てられないという声明を発表しました。オベリスクが倒れ、さらに地下の遺跡まで破壊すれば、アクスムは世界遺産から登録をはずされるというのです。これってイタリア人の陰謀でしょうか?。まぁ確かに、今立っている大オベリスクも思いっきり傾いていますからね。今頃はちゃんと立っているかな。

古代アクスム王国といえば、シバの女王の息子メネリク1世が、父であるソロモン王のもとから十戒の入った聖櫃を持ち出したという伝説があります (正確にはメネリクの従者が勝手に持ち出した)。その聖櫃は今もアクスムの「シオンの聖マリア教会」にあると信じられています。実際にあるのかないのかは確認のしようもありませんが、これをエチオピア人が誇りにしていることは確かです。この教会の隣には「新しいシオンの聖マリア教会」があり、1000年前に書かれたというゲエズ語の聖書を見ることができます。その挿絵は今も鮮やかな色彩を残しており、遙かな時を越えて見る者の胸を揺さぶります。これだけの宝がありながら、観光客からチップを稼ぐだけとはなんとももったいない話です。このあたりが今のエチオピアの限界なんでしょうか。

この日は Good Friday だったので、新しい方の聖マリア教会は中も外も女性の信者であふれかえっていました。ついでに子供もはしゃぎ回っていて、いつもながら外国人をみると陰気に「You…, You…」と言いながらぞろぞろついてくるのが最高にうっとうしかったです。エチオピアほど子供が可愛げのない国はこれまで経験したことがありません。せめて陽気に「You!, You!」と言ってほしい…。もっとも、その子供たちを番人が木の棒で叩いて追っ払っているのはちょっと可愛そうだと思いました。ロバじゃないんだから。

次の日、午後1時半のフライトでアジスに戻る予定でしたが、機体のトラブルで何時間も待たされたあげく、結局その日は飛ばないことになりました。予定外のアクスム延泊です。アジスから来るときも霧で遅れたし、そういえば先月もフライトが12時間遅れたし、やはりエチオピア航空はちょっと…。パイロットの腕は良いようですが、いかんせん機体が古い。あえて3連休のところを1泊2日にしていて正解でした。当然ですがその日のホテルはタダ。ま、ラッキーなのかな。翌日は、朝7時発の予定が10分ほど早く飛び立ち、経由地のラリベラでも30分止まる予定が10分で出てしまいました。結局、当初聞いていたアジス着9時15分が、45分も早い8時半に着いてしまいました。当然、迎えの車が来ているわけもなく、30分以上空港で待たされるはめになりました。飛行機は早く着いても遅く着いてもだめですね。

■アクスムコイン
これはメケレという町に行ったときのことですが、泊まったホテルの向かいに土産物屋があったのでひまつぶしにのぞいていると、店員がショーウインドーのひとつのコインを指さし 「これはアクスムコインだ、20万ドルだが買うか」と真顔で言ってきました。「2万ドルじゃないぞ、20万だ」 …そう言われてもこちらは苦笑するしかありません。そんな私の態度を見てカチンときたのか店員は 「ある有名なアメリカ人コレクターが先月この値段で買ったんだぞ」と少し語気を荒げてきました。うーん。嘘をつくにしてももうちょっとましなことを言えば良いのに…。私は 「いや、買いたいのはやまやまだけど10ブル (130円) しかないんだよ」と言ってそそくさと店を出ようとしましたが、さらに店員はアムハラ語の本を引っ張り出し、いろいろなコインが記されたページを示しながら、なおもアクスムコインの価値の高さを説明しようとしてきました。

いい加減うっとうしくなってきた私は、「確かにアクスムコインにはそれなりに歴史的な価値があるかもしれないけれど、骨董品としての値付けは欲しいと思う人がどれだけいるかによって変わるからね。誰も欲しがらなければ10ブルだって高いよ。それに今はインターネットで世界に流通しているアクスムコインの相場はわかるから。あなたはその点をもっと勉強した方が良いよ」とまくしたてました。どれだけ伝わったかわかりませんが、その店員は 「インターネット…」 とため息をつきながらやけにしょんぼりした顔をして、最後には「サンキュー」と言って私を送り出してくれました。「なんかよくわからないけど、インターネットを持ち出されたら負けを認めるしかない」 みたいな空気がエチオピアにはあるような、ないような…。あのコイン、まだ売れてないだろうなぁ。

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