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2007年11月21日 (水)

シルバーチップ (紅茶の王様?)

日本では銘茶の産地と呼ばれる地域に生まれ育った私ですが、小さいときからとにかく緑茶だけはおいしいものを毎日飲んでいました。なので、自然に「おいしい緑茶の味」がわかるようになったのだと思います。もちろん、地元ではお茶のおいしさなど特に意識することはありませんでした。お茶とは「そういう味のもの」だったからです。しかし、大人になって故郷を離れ、いろいろな所で緑茶を飲むにつけ、「世間の人はこんなに味気ないお茶を飲んでいるのか」とよくため息をついたものです。本当のところ、地元以外で「おいしいお茶だなぁ」と思ったことはほとんどありませんでした。もっとも、我が家は未だに山の湧き水を水道に引いていて、地元のお茶を地元の湧き水で煎れる、という最高の条件を備えているのですから、当たり前と言えば当たり前なのですが。

さて、それまで海外生活ではもっぱらコーヒーを愛飲していたのですが(自分がいかに緑茶を煎れるのがヘタか痛感したので…)、スリランカを旅行して、すっかり紅茶のおいしさに目覚めました。そうなると、最高級のものを飲んでみたくなるのは当然の心理です。緑茶でも、本当においしいものを飲んでいたからこそ、良いお茶、悪いお茶がわかるようになりました。紅茶でも然りです。「最高級=万人においしい」という訳ではないことも緑茶の経験からわかりますが、突き詰めれば、やはり高級品は通をうならせるだけのおいしさを秘めている、ということはわかります。そんなわけで、スリランカを発つ前日、コロンボのさも高そうな紅茶屋で「シルバーチップ」を買いました。

紅茶は普通、1芯2葉(One Bud Two Leaves)を摘み、それをぎゅうぎゅうと機械で押しつぶしてから、適温で酸化発酵させて作ります。しかし、シルバーチップは1芯(若芽)のみを摘み取って作るため、とても希少品なのだということは知っていました。スリランカに旅行することになって、なんとなくシルバーチップのことは頭にあったのですが、峠の茶屋で飲む紅茶ですら、そのおいしさに感動していた私は、是が非でも手に入れたいと思うようになっていました。

そのお店では、シルバーチップを店頭で陳列販売していたわけではありません。噂に聞いていた通り、かなりの高級品、希少品であるため、奥の方にそっとしまわれていました。「シルバーチップが欲しいのだが」と店員にたずねると、最初は「ない」の一点張り。しかしこちらが「日本で茶園をやっている(←嘘じゃない)、美味しい紅茶を求めてスリランカまでやって来たのだ、是非シルバーチップを売ってくれ」としぶとく頼み続けると、ようやく、奥から1パック出してくれたのです。値段は、緑茶の高級品より何倍も高い値がついていました。

翌日、リヤドに戻って来ると(サウジ暮らしの時です)、早速パックの封を切り、まずは香りを確認しました。すーっと鼻で香りを吸い込むと、いわゆる紅茶の香りではありません。甘くて香ばしいような、日向の匂いというか、とても優しい香りでした。手のひらに茶葉を広げてみると、普通の紅茶のように酸化発酵して赤黒くなってはおらず、白っぽいままです。そういえば、スリランカの製茶工場の一角で、お茶の若芽(芯)だけ天日干ししているのを見ましたが、どうやら、それと同じもののようでした。あの時そうだと気付いていたら、もう少しちゃんと話しを聞いたのに。写真も撮らなかったなぁ。

せっかくの高級茶ですから、おいしい煎れ方をしなくてはなりません。いろいろ聞いたり読んだりして、だいたい次のような手順が良いとわかりました。

①空気がたくさん入っている水が良い。ボトル入りミネラルウォーターよりむしろ水道水の方が良い。
②完全に沸騰させるが、沸騰しすぎると水から空気が抜けてしまうのでダメ。
③ティーサーバー、ティーカップは温めておく。
④抽出時間は2~4分。空気が入っている水(お湯)だと茶葉が良くジャンピングする。
⑤抽出した紅茶は毎回カップに注ぎきる。

まずは普通のリーフティーで何度か練習しました。水道水とボトル水、両方試しましたが、やはりボトル水はほとんど茶葉がジャンピングせず、水道水のお茶とはまったく違う香り・味の「まず~い」お茶が出来上がりました。しかし、こうやって比べなければ、この違いは一生わからなかったでしょうから、この発見は大きかったです(知っている人にとっては当然のことでしょうけど)。そもそもスリランカで紅茶がおいしかったのは、案外たったこれだけのことだったかもしれません。高級ぶって高いボトル水を使ったりしては逆にダメなんですね。

さてさて、シルバーチップです。煎れ方について上の手順と変えてみたのは、4分くらいではほとんど色や香りが出なかったため、抽出時間を6~7分とかなり長目にしたことです。これだけ置いても、色は薄い黄金色、香ばしい甘い香りがふわっと立ち上る程度です。ひと口すすっただけでパッと目が覚めるようなはっきりくっきりした味と香りはありません。ダージリンよりもだいぶおとなしいイメージのウバ(セイロンティー)に比べても、さらに穏やか、まろやか、ひそやか。角の立った自己主張は全くなく、舌を包み込むような、かすかに甘みを感じる優しい味が口の中に広がります。わずかにトロンとしたお湯を飲み込むと、日向の枯れ草のような風味が鼻腔をすっと抜けていきました。

正直な感想は「なんだこれ?、紅茶?」。味があまりにも淡いというか、味を知覚するために飲み手に努力を要求するというか、本体がなくて余韻が全てというか…。何ともはや、評価に困ってしまいます。おいしいと言って良いのか、はたまた値段がそのように思い込ませているのか…。とにかく、普通の紅茶の延長線上にあるものではありませんでした。渋みはまったくないし、おいしい紅茶に感じる青っぽさ(フレッシュな青臭さ)もないし、もちろんフルーティーな香気もありません。味としてはせいぜい「かすかに甘いような気がする」くらい(私の味覚と感性では)。シルバーチップが果たして「紅茶の最高級品」なのかは結局最後までわかりませんでしたが、ただ、何度飲んでも後を引く、あの不思議な味の余韻は、やはり唯一無二だと思いました。少なくともまだまだ巷にシルバーチップ信仰は多いし。(写真はシルバーチップ入りと銘打ったリプトンの紅茶)

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