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2008年2月 2日 (土)

千夜一夜の美女:満月姫 (2)

「カマラルザマンと、月の中で最も美しい月であるブードゥル姫の物語」より

自分を溺愛する父王シャーラマンの手を逃れ国を旅立ち、ブードゥルと再会を果たしたカマラルザマン。幸福のうちに時間が過ぎますが、ある夜、涙で顔を濡らし悲しげに訴えかけるシャーラマンが夢に現れます。ブードゥルを連れて帰国を決意したカマラルザマンですが、道中、肌着でテントに横たわり眠るブードゥルを見て、うっとりしながら二編の甘美な詩を思い出しました。

汝、深紅の上に眠る時、
汝が明るき顔は暁の如く、
眼は海の碧空の如し。
ナルシスと薔薇をもって装われし御身の体は、
伸び伸びと立つ時も、
ほっそり横たわる時も、
アラビアに育つ棕櫚の木も敵うまじ。
宝石輝く汝が細やかなる髪の毛は、
重々しく垂れる時も、
軽く広がる時も、
いかなる絹もその自然の織りなしに敵うまじ。

眠れる人よ、
棕櫚がその葉を広げつつ、
光を吸う時は美しきかな。
真の時は息をひそめつつあり。
黄金の熊蜂は、
眩暈の中に薔薇の蜜を吸う。
御身は夢見る、微笑む、
もはや動かず…。
もはや動くな。
汝が薄き皮膚は、
透明なる露を反射して金粉を散りばめ、
棕櫚の誇る太陽の光は、
御身を刺し貫き、
おぉ、ダイヤモンドよ、
御身を中まで照らす。
あぁ、もはや動くな。
もはや動くな。
汝が胸を、
ふくれ上がりまた沈む海の波の如く息づかせよ。
おぉ、雪なす胸よ。
泡立つ浪と、
白き繭の如くに、
そを吸わん。
あぁ、御身の胸を息づかせよ…。
汝が胸を息づかせよ。
さざめく小川はそのさざめきを止め、
熊蜂は花の上にて羽音をひそめ、
我が瞳は、
汝が胸の柘榴色の二つの葡萄の粒に燃ゆ。
おぉ、我が瞳を燃えさせよ。
我が瞳を燃えさせよ。
幸多き棕櫚の下に、
汝が薔薇と白檀に浸け柔らげられし体の中に、
我が魂を花開かせたまえ。
孤独と静寂の歓びの中に。

カマラルザマンは飽きることなくブードゥルを見続けていましたが、そのうち、激しい情熱を感じ、彼女の下袴の絹の紐をほどきました。そして腿の熱い影に手を差しのべると、谷の薔薇の下に絹糸で結びつけられた紅瑪瑙の玉を見つけました。瑪瑙には不可解な呪文が刻まれていたので、テントの外に出て空にかざして見ていると、突然大きな鳥が襲いかかってきて、彼の手から瑪瑙を奪い飛び去ってしまいました。ここからまたも不可思議な冒険が始まります。

一人置き去りにされたブードゥルは、カマラルザマンに変装し旅を続けますが、エベーヌ島の都で若く美しい王女ハイアット・アルネフスと偽りの婚姻を交わします。ここから物語はしばらく、美女と美少女の妖しくも純粋な交歓を描写していきます。例えば、「…なおも二人は、戯れ言を言ったり、したりしたので、朝までにはハイアット・アルネフスはもう何にも覚えることもないように、その身の全ての繊細な器官の、これから果たすべき魅惑的な役割を会得した」 …実写化は、できないな…。

ちなみに、妖女マイムーナとダーナッシによる二人の出会いのくだりは、パゾリーニ監督の「アラビアンナイト」の中で映画化されています。なぜかエチオピア人の俳優で。これだけエチオピア人のヌードが見られる映画は世界にこの1本だけでしょう。アラビアンナイトの物語を知らずに映画を見たら、ただの三文ポルノにしか映らないでしょうけど(モザイクだらけだし、それもたまに外れてるし)、でも世界的に評価されている監督なんですよね。「ソドムの市」の監督だと言えば想像がつくと思いますが。

さて、物語はカマラルザマンとブードゥルの再会、そして彼女だけでなくハイアット・アルネフスもカマラルザマンの妻となって、大団円を迎えます。これを読んだ当時のアラブ人が「萌え~」と言ったかどうかはわかりませんが、 ひとつ確かなのは、ブードゥルのお尻が相当大きいということ、そしてそれは明らかに美人の条件だったということです。

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