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2008年2月 4日 (月)

千夜一夜の美女:エメラルド

「美しきズムルゥドとアリシャールの物語」より

エメラルド(ズムルゥド/ズムッルド)という美しい名を持つ女奴隷を主人公とするこの物語は、ストーリーを追っていくと、そこにアラビアンナイトの恋愛ものでは典型とも言える王道パターンを持っていることがわかります。以下、あらすじ。

昔、ホラサーンの国に、非常に金持ちな商人がいた。商人には満月のように美しいアリシャールという息子がいた。商人はほどなく他界するが、悪友に誘われ放蕩三昧のアリシャールはあっという間に無一文になってしまった。ある日、美しき女奴隷ズムルゥドが市場で競りにかけられていた。詩人は彼女を次のような詩で言い表している。

狂いなき美の鋳型より
かの乙女出で来りぬ
身の釣り合いは比ぶものなし
大きからず小さからず
肥えすぎず痩せすぎず
いたるところまろやかに
整いて気高き顔かたちをば
透かし見さする軽きヴェールは
ひときわ引き立たせ
美、みずからもまた
その面影に憧れたらむ
月代はその顔かたち
なよなよと波打つしなやかなる小枝は
その髪にして
麝香の高き香りは
その息吹なり
かの乙女こそ
溶け流れたる真珠にて作られたりと人言わん
かの四肢は月代のごとき
顔を映すがほど滑らかに
月そのものにて作られたりとしも見ゆるなり
されどいずこに
かかの光の奇跡を語りうる言葉あらん
かの輝くばかりなる臀部をば…

ズムルゥドの競りが始まると、値段はたちまち千ディナールに達した。しかし、主人を決めるのは美しく賢き女奴隷ズムルゥドである。並み居る男たちの申し出を、ズムルゥドは痛烈な詩でもってやりこめた。そしてその場に居合わせたアリシャールを、自らの主人と決める。彼が無一文であることを知ると、ポケットから千ディナールを取り出し、これで払うようにアリシャールをうながした。

アリシャールの家で、ズムルゥドはダマスカスの深紅の絹を用いて見事な刺繍を作った。アリシャールはそれを毎日市場に売りに出かけ、二人は着実にお金を貯めていった。ある日、よそ者に刺繍を売ってはいけないというズムルゥドの忠告を無視して、アリシャールは見知らぬ青い眼のキリスト教徒バルスゥムに刺繍を売ってしまった。

バルスゥムはアリシャールの家に乗り込み、まんまとズムルゥドをさらっていった。親切な人の手助けで、ズムルゥドの救出は成功するはずだったが、肝心のところでアリシャールは居眠りをしてしまい、ズムルゥドは今度は怪力の強盗ジバンにさらわれてしまった。ズムルゥドを一緒に犯して楽しもうと、40人の仲間を呼びに行くジバン。

捕らわれた洞窟の中で、ズムルゥドは監視係の老婆に、頭についた虱を捕ってあげると言い油断を誘う。虱を捕り髪をすいてあげると、案の定、あまりの気持ちよさに老婆は眠りに落ちてしまった。彼女は男物の服に着替え洞窟から逃げ出すと、10日間も砂漠をさまよった末、ようやくある都にたどり着いた。

都の城の前には人々が集まり、ズムルゥドの到着を固唾を飲んで待っていた。彼らに何をしているのかとたずねると、その都の君主は子をもうけず亡くなったため、最初に都の前を通った者を新たな君主に迎えることを決めたのだと言う。そして、今日からズムルゥドが王であると告げられた。

男装していたズムルゥドは女であることを隠し、その都の治世を行った。まず、蔵の奥深くにしまわれていた蓄えを取り出し貧しい人々に分け与えた。宮中の人間にも数多くの贈り物をし、さらに税金を廃止、囚人を放免してやった。新しい王は身分の上下を問わず誰からも人気を得た。王様は後宮にも入ろうとしない純潔な魂の持ち主だと賞賛された。

ある日ズムルゥドは、ちょっとした思いつきを実行に移した。大きな天幕を張り、民衆のために大規模な宴を催したのだ。すると、ズムルゥドをアリシャールの元からさらった青い眼のキリスト教徒バルスゥムが現れた。彼はクリーム入りのご飯が盛られた大皿を独り占めした。ズムルゥドは一目で敵であることを見極め、彼を捕らえた。彼の嘘を見破り、過去の罪状をあばくと、生きたまま皮をはぎ死体を野にさらした。

二度目の宴では、強盗ジバンがやって来た。またもクリーム入りのご飯が盛られた大皿を独り占めしたところを、ズムルゥドは宦官に捕らえさせた。そして浅はかな嘘を見破り、罪をあばくと、同じように生きたまま皮をはぎ死体を野にさらした。人々はあんなに温厚だった王が豹変したことを恐れた。そしてクリーム入りご飯は不吉であると口々に噂しあった。

三度目の宴では、もうクリーム入りご飯に手を伸ばそうとする者は誰もいなかった。そこにやって来たのは、バルスゥムにズムルゥドをさらうよう命じた兄のラシデッディンだった。一月前にズムルゥドを探しに出かけたまま戻ってこない弟を探すため、あたりをさまよっていたのだ。彼もまたクリーム入りご飯を食べ、嘘を見破られ、そして処刑された。人々は、もうクリーム入りご飯は一生食べないと心に誓った。

一方のアリシャールはというと、ズムルゥドを失った悲しみで体をこわし、優しい老婆のもとで一年間ずっと看病されていた。老婆に勇気づけられ、ようやくズムルゥドを探す気力を取り戻すと、土地を離れ、いつしかズムルゥドの都にたどり着き、そして彼女が催した四度目の宴の席に偶然飛び込んだ。彼が不吉なクリーム入りご飯を食べ始めると人々に緊張が走ったが、意外にも王の言葉は優しいものであった。

ズムルゥドは一目でアリシャールのことがわかったが、彼はまったく気がつかなかった。王のはからいでトルコ風呂を浴びた後、王の部屋に呼ばれても、まだズムルゥドであることがわからない (ズムルゥドもわざと男性の声色で話しかけていたのだが)。王の足を按摩しても、その色の白さと柔らかさにただ驚くばかりであった。終いには、ズボンを脱いでうつぶせになれと王に命令され、やけくそになってそうするアリシャール。

彼の背中に乗ってぴたりと体を合わせてきた王様。しかしアリシャールの予想に反し、それは妙に軽やかでビロードのように肌触りが良く温かい、すべすべしていてまろやかなものだった。それに梨でも触るようにむっちりとして引き締まっていた。王はそのようにして一時待っていたが、すぐにアリシャールの背中から下り、彼の側に体を横たえた。

アリシャールは「アルハムドリッラー!(アッラーに讃えあれ)、アッラーは王様の逸物を立たせられなかったのだ」と安心した。ズムルゥドは王の声色で「私のものは指で揉んでくれなくては立たんのだ、そうしないと命はないぞ」と脅し、彼の手をくだんの場所に導いた。

アリシャールが触ってみると、王座のように高まった丸いもの、それでいて雛鳥のように脂ぎり、鳩の喉よりも熱くて情火に燃えあがった、心臓よりももっと燃えさかったものを感じた。その丸いところは、すべすべしていて白く、妙に湿り気をおびて広々としている。と、突然鼻を刺された騾馬のようにぴくぴくと反り返るものを感じた。

「この王様は裂け目を持っている!。これはあらゆる不可思議中の不可思議だ!」 こうと知ってしまうと、突如として彼の逸物は立ち上がり始め、隆々天をつく形になった。ズムルゥドはこの瞬間を待っていたのだ。「懐かしいご主人様!」そう叫んで正体を話して聞かせると、アリシャールは有頂天になって喜び彼女を抱きしめた。

二人は熱い抱擁を交わした。愛撫には愛撫を返し、手を変え品を変えた嬌態媚態。隆々たる牧杖は嚢中に沈み、小路の狭さもかいくぐってぐいぐい進んだ。そして道の行き詰まりまで行くと、この門の門番にして壁籠にこもった坊主は、長い間まっすぐに固くなったままじっとしていた。この後二人は、部屋の門番が怯えるほど声をあげながら、愛を確かめ合った。

翌朝、ズムルゥドは王の衣装をつけなおし、アリシャールと二人で都を去ると人々に伝えた。人々は金銀宝石衣装やその他の豪華美麗極まりないものでたくさんの箱を満たし、駱駝の背に積み上げた。支度が整うと、ズムルゥドとアリシャールは一瘤駱駝の背に設えられたビロードの輿に乗り、ホラサーン国に帰っていった。そしてたくさんの子供をもうけ、幾久しく生きたのであった。

とまぁ、こういうストーリーです。美男美女、善人悪人、知謀奸計、美食贅沢、冗談猥談。娯楽要素をこれでもかと詰め込み、さらに合間合間に挿入される色とりどりの詩によって、物語はその輝きを増していきます。こんなストーリーが千年前に創作され流布していたことには驚きを禁じ得ません。しかも、今読んでも面白いのですから。いつか、アラビアンナイトを原書で読んでみたいものです。

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