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2008年2月 1日 (金)

千夜一夜の美女:優しき友

「優しき友とアリ・ヌゥルの物語」より

優しき友 (アニス・アル・ジャリス) は、ただ、まっすぐな見事な乳房を持ち、褐色の瞼をしていて、眼は夜のごとく、豊かでなめらかな頬を持ち、細くて笑窪がほのかに笑いかけて影をなしている顎を持ち、腰はふっくらとしていて頑丈そうで、胴体は蜜蜂のようにほっそりとし、重々しく堂々たる尻をした、姿良き乙女であった。彼女はあまり類のないより抜きの布で作った衣装を着ていた。彼女の唇は一茎の花、そして唾液は清涼水よりも甘く、唇はニクズクの実よりも紅く、身体全体は柳の小枝よりもなよやかだった。そしてその声に至っては、微風のうたう歌よりも旋律に満ち、庭の花々の上を香り高く吹いてゆく微風よりもなお心良きものだった。彼女はあらゆる点から見て、彼女を描いた詩人の次のような詩にふさわしかった。

その肌は絹のように柔らかく、
話すや水の如くなよやかに、
声は澄み安らぎに満てり。
その眼こそ、アッラーの神が
「かくあれかし」と言えるが如かりき。
まことに神の創りし業なりき。
その伏せし眼差しの人の心をかき乱すこと、
酒も酵母も及ばず。
おお、彼女を愛するということは。
夜深く彼女を想えば、
我が心乱れ、我が身は燃ゆ。
我はかのぬばたまのみどりなす髪を想い、
暁のように輝く額、
朝をひらくものを想うなり。

大臣ファドレディンに黄金1万ディナールで買われた美しい奴隷「優しき友」は、王に差し出される前に、大臣の家で10日間を過ごすことになります。そこで、休息を取るとともに、さらに美しく磨かれるのです。

優しき友は大臣の同じ館の中にあるトルコ風呂へ行った。可愛い奴隷たちはあらゆる技術をかたむけて人生最上のものたる湯浴みをさせた。四肢全体と髪を洗った後、奴隷たちは按摩をし撫でさすり、焼き砂糖の練り物で注意深く毛を抜き、髪には麝香の香り高い柔らかい香水を注ぎ、手の指や足の指の爪は指甲花で色どり、睫毛と眉はコール墨で長くし、反魂香と龍涎香とを香鍋で足にたきこめ、かくて皮膚の隅々まで密かに香るようにした。ついで奴隷たちは、オレンジとバラの花の香りのする大きな手拭いを彼女の身体にうちかけ、たっぷりとした厚い布で髪全体を締めつけて、トルコ風呂から出て彼女のためにしつらえられた部屋に連れて行った。

優しき友は奴隷と呼ばれていますが、彼女を育てた所有主は、大臣に次のようなことを言っています。

私はこの子に勘定は度外視して様々な教師をつけました。彼女は美しい習字法やアラビア語とペルシャ語の規則や文法、構文法、聖典の解説、神聖なる律法の定めやその始源、法律学、道徳論と哲学、幾何学、医学、土地台帳の作り方などを知っています。しかし彼女がもっとも優れておりますのは、詩学と実に様々な楽器の奏し方と歌と踊りでございます。それに彼女は詩人物語作者のあらゆる書を読みました。そしてそれらすべては、彼女の性格と情操をより美しくすることだけに役立ったのでございます。

知識と教養を併せ持つ見目麗しい美女でありながら、奴隷として男性に所有されるというフェティッシュな設定は、アラビアンナイト全編を通じてたびたび見られるものです。当時の男性諸氏の妄想を大いにかき立てたことは想像に難くありません。優しき友は、この後美男の誉れ高いアリ・ヌゥル(大臣の息子)と結ばれてしまい、そこから波乱の物語が始まります。アリ・ヌゥルは美男だけれどダメ男といった風体で、最初から最後まで主役は彼女の方でした。

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