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2008年4月25日 (金)

血の代償

イスラム法の刑罰について以前こちらに書きましたが、その中で、被害者の遺族が加害者に対して同害報復を行う代わりに、一種の賠償金である「血の代償」を支払って和解が認められる制度があることにふれました。イスラム法成立初期の事例を以下に記しますが、現代においても時流に合わせて解釈され、無益な報復の阻止、遺族の生活に対する補償金の確保という点に寄与しています。

ある者が故意かつ不当に殺され、その報復権を被害者の相続人が放棄すると、加害者は遺族に対し重い血の代償を払わなければなりません。ある者が偶然に殺された場合は、軽い血の代償となります。その支払いは家畜 (ラクダ) か現金。支払額は性別、宗教、身分により異なります。例えば、殺されたのが女性の場合は、男性の半額とされていました。また、人を殺すと、報復を受けるか血の代償を支払う他に、1人のムスリム奴隷を解放するか、2ヶ月間の断食 (日中に飲食を断つ) をしなければなりませんでした。傷害に対する血の代償については、被害程度が調査され、傷害の箇所によりどの程度の支払いになるか判決が下されました。

ちなみに、日本でも度々話題に上る死刑廃止論ですが、世界を見渡しても、すでに半分以上の国で死刑制度がなくなりました。今や、死刑執行はごく一部の国に偏っています。中国、イラン、アメリカの3ヶ国で、2002年に世界で行われた死刑のうち81%が占められていたそうです。この年、中国=1060人、イラン=113人、アメリカ=71人。中国は人口が多いこともあるでしょうが、やはり突出した数値です。

2005年には、イラン=94人、アメリカ=60人と多少減っていますが、中国=1770人、サウジアラビア=86人と、増えている国もありました。この4ヶ国で、世界の死刑執行の94%を占めていることになります。サウジアラビアは、よくこういうところに顔を出しますね。他にも女性の人権が無視されているとか、欧米の人権擁護団体からは格好のターゲットにされています。まぁ、言われてもしょうがないかな。

さて、イスラム法の「血の代償」ですが、日本でも適用できないものでしょうか。例えば老いた母親が、同居するたった1人の息子を殺された場合、犯人を極刑にする云々より (実際にはこのケースでは死刑は適用されないようですが)、今後の生活の糧をどうするかが、切実な問題として浮かび上がってきます。日本の刑法で、殺人の量刑に追加する形で罰金 (十分な額の賠償金) の命令があるのかどうか知りませんが、民法に基づいて別途損害賠償の訴訟を起こすなんて一般人には相当敷居が高いですから (裁判は費用もかかるし)、刑法でそちらもカバーできれば、遺族はずいぶん助かると思います。

また、当事者間の「和解金」という、ある種、なぁなぁのスタイルにすると、「息子の死を金で買った」などと揶揄する人もきっと現れるでしょうから、それを法制度化すれば、もらいすぎることも少なすぎることもなく、堂々と生活補償金を手にすることができます。さらに、1年につき500万円とか決めたら、懲役20年のところを、10年分は5000万円の補償金をもらって、犯人は懲役10年にするなどの取り引きもアリではないでしょうか。もちろん、最低何年かは刑務所に入らなければならないなどの原則を決める必要もあります。

ところで、刑務所というのは、凶悪犯が改心するのにふさわしい施設なんでしょうか。環境が人を変えるのではなく、やはりその環境下で出会った人たちとの交流によってのみ、人の心は変化していくんじゃないかと思います。犯罪者ばかりを狭いところに押し込めたって、さらなる企みが生まれるばかりでしょう。なので、刑務所の代わりに、思い切ってエチオピアの地方の村でボランティア活動をさせるということを提案したいと思います。世の中には、こんなに簡単に人が死んでいく世界があるんだと、涙が溢れること間違いなしです。

ひとしきり泣いた後、自分が泣いたって目の前の人が助かるわけではないということに気づき、人の命のはかなさ、そして今自分が生きていることの奇跡に思い至ることは、そう時間のかかることではありません。命の尊さを知るためには、逆説的ですが、人の死を感じることが大切なのだと思います。この「エチオピア・ボランティア刑」(←実はものすごく失礼だ)、いきなり大人の凶悪犯罪者から始めるのはちょっと危ないような気もしますから、まずは少年犯罪に適用してみてはいかがでしょうか。

エチオピアの田舎に1年もいたら、人生観が変わりますよ。本当に。ついでに、体型も変わりますね。間違いなく激痩せして、身体中ノミ、シラミ、南京虫だらけになるでしょう。マラリア、肝炎、髄膜炎、エイズ、フィラリア、デング熱、その他危険な感染症が山ほどありますから、病気で死ぬ確率も日本よりはずっと高いでしょう。これに比べたら、刑務所なんてホテルと一緒かも? (入ったことないけど)。

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