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2008年4月28日 (月)

タイ料理の色彩

今でこそタイ料理は大好きですが、初めてのタイ旅行でパタヤにいった時、海岸通りのレストランで食べたカレーには、驚きを通り越して静かな怒りをおぼえたものです。バンコクでは知らず知らずのうちに中華風のものばかり食べていたため、タイ料理っておいしいなぁと毎日ご機嫌でした (パクチーをのぞいて)。汁そば、焼きそば、チャーハン、豚足ご飯、串焼きなどなど、何を食べてもおいしくて、このままだと幸せすぎてバチが当たるかも、などと考えたりしました。学生時代の一人暮らしで、カレー、ラーメン、吉野屋と、野菜も食べずに好きなものばかり食べていた時のちょっとした罪悪感にも似ています。

バンコクからバスに乗り、パタヤに着いたのは昼前の時間でした。適当に安宿を決めてから海岸通りに出かけると、立ち並ぶレストランのうちひときわ大きなタイレストランに入りました。それまでほとんど屋台かフードコートで食事を済ませていたので、メニューを見た時はバンコクよりもかなり高めの値段設定にややあせりましたが、中でもあまり高くないタイ風カレーを選択しました。旅行に来て、初めて食べるカレーです。というより、その時はタイ料理にカレーがあるということを知りませんでした。「タイ風のカレーを食べるぞ」と意気込んでいたわけではなく、単にインドカレーみたいなものを想像していただけです。

オープンテラスに座って海を眺めていると、すぐに料理が運ばれてきました。しかし、大きな器の中にはオレンジ色のトロトロの液体が入っています。「カレー、……なの?」と首をひねって、ウエイターの方をチラリと見たのですが、別に間違ってここに運ばれてきたわけではなさそうです。カレーが黄色オンリーではないことはわかりますが、想像とはかなり違ったものが出てきたので、少し取り乱してしまいました。水を1杯飲んでから、気を取り直してスプーンでひと口すくって味見をしてみると、辛い、そして甘い。それもそのはず、ココナッツミルクが山ほど入っています。しかしベースは真っ赤なカレーだけあって、メチャメチャ辛い。そこにココナッツミルクの甘さが入るので、色はオレンジに、辛さもマイルドに………、なってなーい!。これではただ激辛で激甘なだけです。

お腹は減っているのにまったく食が進まず、20分ほどカレーとにらめっこをしたのですが、結局ほとんど残してしまいました。この時のショックと言ったらありませんでした。「この値段だったらバンコクの屋台でラーメンが5杯食えるのに」などとせこいことも考えましたが、日本も含めて外食で頼んだ料理をほとんど残すなんて生まれて初めての経験だったため、我ながらなんともいえない敗北感というか、やり場のない憤りをおぼえたわけです。ココナッツミルクはその後ほどなくして大好きになったのですが、この時の自分にとってはあまりにも違和感のある味で、どうしてもスプーンを口に運ぶことができませんでした。

お金を払う時、ウエイターがテーブルの上のほとんど手をつけられていない料理を見て、心配そうな顔つきでこちらを見たのですが、それを無視して無言でレストランを出てしまいました。その時自分はどんな顔をしていたんでしょう。勝手に一人で怒って憮然としていたのなら、今考えるとすごく恥ずかしいです。「こんなまずい料理食えるか」と思っていたなら、当時にタイムスリップして、「まずい料理じゃなくて個人的に口に合わないだけ」と自分自身に注意してあげるのですが。

パタヤからバンコクに戻って、今度は屋台だけでなくいわゆるレストランという所にも行ってみました。そうしてメニューを見たら、あるわあるわ、色とりどりのカレーが。レッドカレー、イエローカレー、そしてグリーンカレー!。今でこそグリーンカレーは月に1度は食べないと気が済まないのですが、当時はなんとも奇妙な食べ物に思えました。インドにも緑色のカレーはありますが、それはほうれん草ペーストのカレーです。グリーンカレーって何故あの薄緑色なんでしょう。見当もつかない。

カレーだけではなく、タイ料理は全般的にカラフルです。日本料理も色彩は豊富ですが、どちらかというと地味で渋いテイスト。中華は自分の知っている範囲では茶色が基本て感じ。フランス料理とイタリア料理も、経験の範囲ではあまり特筆すべきカラフルさはないような。しかしタイ料理は、色鮮やかな上に原色が多いように思います。その上、1皿の中にたいてい赤、黄、緑の三色が入っています。赤はカニ、エビ、赤唐辛子など。黄はココナッツミルクが溶けたスープ、もやし、パパイヤなど。緑は空心菜、ネギ、青唐辛子、パクチーなど。というかたいがいパクチーは乗っているので、緑はほぼ確実に確保されていますが (泣)。

タイ料理にはいろいろときれいなものが多いですが、個人的に一番見た目でほれぼれする料理が、カニのカレーソース炒め卵とじ (プーパッポンカリー)。有名店ソンブーンに行ったら必ず注文します。というよりも、これを食べにソンブーンに行くのですが。マイフォトに載せた写真は、すでに途中まで食べ進んだものなので、見た目がかなり汚くなってしまいました。テーブルに運ばれてきた直後のお皿は、それはもう完璧なまでに美しい姿をしています。情熱的なカニの赤、全てを包み込むような優しい卵の黄色、抜群のアクセントを醸し出すネギの緑。見た目良し、香り良し、そして何より味が良し。

タイ料理ってすごいなぁとつくづく思います。味覚と嗅覚に加え、視覚も楽しませてくれるわけですから。日本料理も、例えば海鮮丼なんて素晴らしく色鮮やかですが、残念ながら嗅覚にはほとんど訴えかけてきません。日本料理で嗅覚といったら、やはりウナギの蒲焼きでしょうか。甘辛のちょっと焦げた匂いはこたえられません。お腹がぐうぐう鳴ります。焼き鳥もいいなぁ。特に鶏皮。いや、最後は関係ない話になってしまった。

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