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2008年6月24日 (火)

パペチュアル・マイナー/サウジ女性に対する人権侵害報告 (3/3)

(2/3からの続き)
■身分証明書類
サウジアラビア政府が女性に単独のIDカードを発行するようになったのは、2001年からのことである。それ以前は、女性は父親か夫のファミリーカードの下に登録されていた。法律では、15才以上のすべてのサウジ男性がIDカードを取得することになっているが、女性用IDカードは今でもオプション扱いで、取得にはやはりガーディアンの許可がいる。また、ガーディアンの反対によってIDカードを持てない女性もたくさん存在する。最近、内務省がガーディアンの許可を不要にしたとも聞くが、今のところHRWはそれが明文化された書類を見ていないし、現実に今も女性はガーディアンの許可を求められている。

宗教警察は女性に対して、公共の場では全身を黒い外套で包み隠すよう強制しているが、IDカードの顔写真は警備上の都合でちゃんと顔を出している。役所の手続きに出かけた場合、女性専用セクションがない場所では女性は顔をさらすことができないので、当人かどうか証明する付添人が必要である。そもそも、役所では女性のIDカードをほとんど受け付けていないのが実情である。結果、どんな場合でも、女性が当人であると証明する付添人がいなければ万事が進まない。

顔を隠した女性を当人だと証明する付添人は、社会のあらゆる場面で求められる。たとえば携帯電話ショップも、ガーディアンがいなければ女性に電話を売ることは禁じられている。女性がIDカードを取り出し、ベールをはずして顔を見せても、店員から拒否されてしまう。IDカードがIDとしてまったく認知されていないのである。

■離婚女性および未亡人が直面する問題
離婚した女性や、夫を亡くした女性に対する法的な保護が欠如しているため、夫に代わる協力的なガーディアンを得ない限り、彼女たちがサウジアラビアで生きていくことには大変な苦労がともなう。日常生活のあらゆる場面でガーディアンは必要であり、社会的・経済的困窮は彼女たちに恐ろしい決断を迫る時がある。ある女性は、それを解決するため望まない結婚をした。そして、「私は自分の体を売った。尊厳は傷ついたけど、これで生活は元通りになる」 と娘に話した。これを聞いた娘はショックを受けたが、現実を考えれば母を責めることはできなかった。

当局では、こうした女性たちのガーディアンは通常もっとも近い親族が引き継ぐものとしている。サウジ男性と結婚し、サウジ国籍を取得した外国人女性については、ほとんどが本国に帰るしかないが、子供と離れたくないためガーディアンなしでサウジアラビアに残る者もいる。彼女たちがIDカードの取得や配偶者用から独身者用パスポートへの切り替えを行うためには、いずれも離婚した夫の許可が必要である。しかし、こういった外国人女性はサウジアラビアの社会システムからは逸脱した存在で、「好ましからざる人物」 と考えられている。

■女性の移動の自由の否定
世界中のどの国も、サウジアラビア以上に女性の移動を制限している国はない。内務省は、ガーディアンの許可レターを持たない女性を飛行機に搭乗させることを禁じている。女性がガーディアンなしに旅行する時は、イエローカードに旅行回数と日数をガーディアンの承認のもとに記し携帯しなければならない。また、女性はパスポートを申請する時もガーディアンの許可が必要である。女性と子供は旅行する際、事前に旅行ビザを外務省から取得しなければならないが、それにもガーディアンの承認が必要である。

銀行で5年働き、経済的には完全に自立している35才のある女性は、仕事でジェッダやダンマンに行く必要があっても、ガーディアンの許可がなければ一切できないと不満を漏らした。夫が亡くなり、自分の息子がガーディアンになった女性もいる。息子は遠く離れた町で働いているため、母親が旅行をするたび実家にかけつけ許可レターを書いている。また、45才以下の外国人女性巡礼者は、ハッジ (巡礼) に際して男性の親族を付添人として同行しなければならない。

■女性の運転の禁止
サウジアラビアは、世界でも唯一女性の運転を禁止している国である。この規制は、公共交通機関の貧弱さと相まって、サウジ女性が社会活動に参加することの阻害要因となっている。なお、政府は公式には禁じていないと言うが、女性ドライバーが一人も存在しない現状では、それは禁止されているのと同じである。女性の運転に関する宗教界の見解 (ファトワ) は次の通りである。

「女性に対し運転が許可されていないことは疑いの余地がない。女性の運転は、女性が保護者なしに男性の中に入っていくことであり、様々な恐ろしい結果を招く。また、禁じられている凶悪な犯罪を招くのである」

1990年11月6日、47人のサウジ女性がリヤドのある駐車場で車を運転し、女性の運転解禁を訴えた。すぐに交通警察が彼女たちの行動を止め、全員警察署に連行されたが、ガーディアンが警察に出頭し 「二度と運転はさせない」 という誓約書を書いた後に釈放された。中には公務員もいたが、彼女たちは政府事務所における職務を停止され、パスポートは没収、新聞記者に一切しゃべらないと誓わされた。ある者は、3年間に渡り職務を停止させられた。当時のデモに参加した一人の女性は、あの後に昇進のチャンスが何度も意図的につぶされたと語った。

■結婚における男女平等の否定
サウジアラビアでは、結婚はイスラム法に基づくある種の契約である。女性には自由に結婚を決める権利はなく、ガーディアンの許可が必要である。結婚は、女性の意志ではなくガーディアンの意志によって決めることができる。ただし、女性の意志を確認することが勧められている。2005年4月、宗教界からも、イスラム法の下では女性が望まない結婚はさせるべきではないというコメントが出された。しかし、現行の法律においては、女性の意志を顧みずその結婚に固執するガーディアンの意志を、法的に止めることはできない。

最近のケースでは、ファティマの一件が新聞の紙面を賑わせた。34才のファティマは、亡くなった父に代わりガーディアンとなった異母弟によって、夫のマンスールと強制的に離婚させられた。この弟は、マンスールが姉に求婚した時から、彼の部族が自分たちの部族よりも序列が低く、一族としてふさわしくない結婚であると考えていた。この件が地元の裁判所に持ち込まれた時、ファティマのお腹にはマンスールの子が宿っており、ファティマは離婚したくないと訴えた。

しかし裁判官は弟の主張を認め、2005年8月、二人に離婚を命じた。ファティマの属するアザーズ族にとって、マンスールのティマニ族は階級が低すぎ、社会的に釣り合わないことが決定打となった。裁判所の判決を受け、サウジアラビア東部州の役所も二人を引き離すことを支持した。弟の元に戻ることを拒否した彼女は、しばらくの間ダンマンの留置所に拘束されていたが、2006年4月、彼女は違う留置所に移送された。

2007年2月、ある女性グループが国王宛に二人の離婚判決を再審議するよう嘆願書を提出した。嘆願書の中には、ガーディアン制度の見直しについても申し立てが記されていたが、政府はこの嘆願書に対して正式な回答をしていない。サウジ人権委員会は国王に対し何度も陳情しているが、同時に、イスラム法学者に対してこの判決が違憲か合憲かの論証を急がせている。

■子供の保護者である権利の不平等
サウジアラビア政府は女性からあらゆる決定権を奪っているだけでなく、自分の子供のガーディアンになることも許していない。夫婦が離婚した場合、男子は9才、女子は7才以上であればガーディアンは自動的に夫になる。このケースにおいては、離婚が夫の非によって生じたものであると裁判所が判断すれば、母親は子供を引き取ることができるものの、子供たちの法律上のガーディアンは別れた夫であるため、その後何年間も子供たちは何事につけ彼に許可を請わねばならない。

たとえば子供たちに銀行口座を開いてあげたくても、母親は何もしてやれない。学校の入学もそうであるし、母親が子供たちと旅行をしたい時にも、前夫の許可証が必要となる。わが子の出生証明書ですら母親は単独では取得できないし、子供の銀行口座にお金を積み立てようとしても、そこでも法律上のガーディアンである離婚した夫の許可が必要となる。

このケースの実例として、夫と離婚した後、11才の息子と一緒に暮らしていた母親に起きた出来事がある。2006年12月、医師の薦めにより息子に簡単な手術を施すことを決めた母親は、前夫にガーディアンとして許可を出すよう願い出たが、前夫はこの手術は必要ないと拒否した。母親は手術を実現するため、法務大臣とリヤド州知事に陳情書を送った。州知事オフィスは当初 「何もできることはない」 と言っていたが、2週間後、州知事 (サウド王家プリンス) から手術の許可証が送られてきた。

保健省のガイドラインには、子供の手術にあたっては両親のどちらでもゴーサインを出すことができると規定されている。しかし実際には、父親のものしか認めない医師もいる。法は整備されているが、それを実行する医師たちが法の遵守を妨げている状況である。この点について、医師たちを啓蒙する必要がある。

政府は、責任ある男性が存在しない場合に、女性が未成年者のガーディアンになることができる特例を設けている。ある30代の女性は、10代の二人の異母妹のガーディアンとして法律上も登録されているため、男性ガーディアンと同等の行為が可能である。しかし、自らのガーディアンは叔父であるため、経済的に独立しているにもかかわらず、自身のことについては何一つ決定権限を持たない。これもまた矛盾のひとつである。

(終わり)

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コメント

やっぱりため息しか出ません!

投稿: marika | 2008年6月24日 (火) 03時01分

優しい旦那さんに当たればいいんですけどね。結婚前に何回か食事デートくらいさせてあげればいいのに。

投稿: shukran | 2008年6月25日 (水) 05時23分

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