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2008年6月 6日 (金)

お気に入りCD:シタール

■Anoushka (Anoushka Shankar)
1. Bairagi
2. Tilak Shyam
3. Kirwani
4. Charukeshi
5. First Love (Pratham Prem)

学生時代、よく吉祥寺の羅宇屋でカレーを食べながらシタールを聴いていました。香辛料の匂いとアジアン雑貨に満たされた薄暗い店内は、まるで時間が止まったかのような不思議で怪しげな異空間でした。そこで聴いていた、「ビヨォーン、ピヨョォオン♪」というけだるく優しいシタールの音色が、ずっと耳から離れませんでした。世の中にはこんなに素晴らしい音楽があるんだなぁと地味に感動し、羅宇屋のカレーは微妙に違うんじゃないかと思いつつも、シタールの音色に誘われてよく通っていました。

そんなこんなでカタールに赴任。幸か不幸か町はインド人だらけで、アラビア語なんて使う機会がなかった代わりに、インド人の友達はたくさんできました。彼らに「シタールのいいCDない?」と聞きまわったのですが、彼らの興味は100%インド映画。サントラのテープはいろいろと紹介してくれるのですが、シタールとなるといつも「?」という顔をされていました。自分もインド映画の魅力にはまったくちですが、それはそれとしてシタールも聴きたかったわけです。

シタールといえばラヴィ・シャンカール、ということは知っていたので、自分でもいろいろと探してみましたが、なにしろ大家だけあってとにかくたくさんテープが売られています。もうカンで選ぶしかなかったのですが、見事なくらいカンがはずれまくって、「いいことはいいけど何か違う」というのが続きました。結局、カタールではお気に入りを見つけることはできませんでした。

次に行ったサウジアラビアは、カタールに比べたら大都会で、CD屋もたくさんありました。しかも、店のオススメCDにはシールが貼られていてとても選びやすい。ここでもまずはラヴィ・シャンカールをいくつか購入しました。しかし…。

「Best of Ravi Shankar-Bridges」はほとんどの曲でシタールが構成楽器の一部という扱いで、純粋にシタールを聴きたい自分にとっては正直まるで期待はずれでした。「Tana Mana」はもはやインドという枠を飛び越えたニューエイジ音楽の部類で、これはこれで評価する人はいるでしょうけど、自分としては完全に興味の対象外。「Sounds of India」が一番良くて、特にシタールを勉強したいと思っている人には、ラヴィ・シャンカールが特徴的な旋律を説明してくれているので大いに参考になるでしょう。

カタールで聴いたテープ5、6本とこのCD3枚だけで決めつけるのは良くないですが、個人的な感想を言うと、ラヴィ・シャンカールのシタールの音は主張が強いというか、なんとも鋭い感じがします。一音一音に明確な意図を込めて奏でているということが伝わってくるので (←当然といえば当然ですが)、なんだか聴いているこちらも姿勢を正さないと失礼に当たるような、ちょっと緊張する感覚があります。これは、自分にとってのシタールの原点、吉祥寺の羅宇屋で聴いたゆったりまったり響く音色とは大きく異なりました。

「ラヴィ・シャンカールは自分に合わないのかも」と思って、L・シャンカールの「Who's to Know」、シャヒード・パルヴェーズの「Revelation」も買ってみたのですが、やはり何かが違うと感じました。自分はシタールの切れ味鋭い演奏を聴きたいのではなく、ただつま弾くように紡ぎ出されるシタールの音色そのものを楽しみたかったので、あまりしゃかりきになって演奏しているものはちょっと…。曲調も微妙に好みではなかったし。そんなわけで、ちょっとがっかりしたこともあってそれから何年もシタールを聞くことはありませんでした。そして、数年を経てようやく出会ったのがアヌーシュカ・シャンカールです。

実を言うと、このCDをいつiTunesに入れたのか全然思い出せず、今回CDジャケットを見つけて「こんなだっけかな?」なんて思っているくらいです。なので、これまで誰が演奏しているかなどまったく気にせず、単に「これは今までのと違うぞ」と思いながらかなり気に入って聴いていました。そのシタールの音色は、まさに自分が聴きたかった音そのもの。ゆったりと、「ビヨョョォォオン♪」と響くシタールは、音階の間にも豊かな音を感じさせてくれます。もちろん、音を追うのが大変なくらい早弾きしている曲もあるのですが、そうなっても絶対的に音が優しいというか、耳にとても心地よく伝わってきます。

そうしてここ何年かシタールといえばこのCDを聴いていたのですが、つい最近になって、アヌーシュカの素性を知るに至り激しく驚くことになりました。以下、あるサイトに載っていた彼女の経歴です。

【アヌーシュカ・シャンカール】
1981年、英国・ロンドン生まれ。シタール (インドの古典弦楽器) 奏者。父はインドを代表する古典音楽家であり、伝説のシタール奏者のラヴィ・シャンカール。姉 (異母姉) は世界的シンガーのノラ・ジョーンズ。9歳から父のもとでシタール奏者としての「修業」を始め、10代のはじめには父の演奏ツアーに同行。1998年、17歳の時にファーストアルバム「アヌーシュカ」を発表。さらに2000年には「アヌラグ」、2001年には「カーネギー・ホール・ライブ」と立て続けに2枚のアルバムを発表。いずれも高い評価を博し、名実とともに世界が認めるアーティストとなる。2005年に発表したアルバム「ライズ」では、インド古典音楽とコンテンポラリー・ミュージックの融合に挑み、グラミー賞最優秀ワールド・ミュージック・アルバム部門でノミネートされている。最新アルバムは2007年にEMIよりリリースされた「水の旅」。「ライズ」が更に進化した内容のこのアルバムが、ラヴィ・シャンカールやノラ・ジョーンズ、スティングとのコラボレーションで話題を集めたことは記憶に新しい。現在は父の世界ツアーに同行する一方で、ソロ・ツアーも行うなど積極的な演奏を続けている。

………すごい。本物のサラブレッドだった。17才にしてこんな素晴らしい演奏をするとは。父親ゆずりのテクニックに、その音色は女性ならではの柔らかさを加え、のびのびと気持ちの良いメロディー。しっかりツボにはまりました。願わくば、後年の父親のようにあまりニューエイジ方面に走らなければ良いのですが。

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