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2008年6月20日 (金)

スリランカ政府にとばっちり

ヒューマン・ライツ・ウォッチ (Human Rights Watch) はニューヨークに本部を置く国際人権NGOです。世界各国で社会差別、ジェンダー差別、拷問、少年兵など人権侵害にかかる問題の調査を行っており、その調査報告書は先進国においてはかなりの信頼を得ています。調査される側にしてみれば内政干渉も甚だしいのですが、ある事柄に対する抑止力を生む原動力としては、非常に強力な力を発揮しています (←"力"ばっかりだな)。

正直言うとこういう人権擁護団体というのはどこかうさんくささが感じられてあまり好きではないのですが、ウェブサイトに掲載されている報告書はどれも興味深いものばかりです。その行動力と調査力・取材力には素直に感心しますが、被害者の声として極端なコメントが多いので、そこをどの程度スクリーニングして読むかがポイントでしょう。ほとんど午後のワイドショー的世界ですから (事実は小説よりも奇なりってことでしょうか)。

このHRW、調査報告書に加えて、時々各国政府要人に対してレターを書いています (ウェブサイトで閲覧可能)。それはサウジアラビア国王宛の死刑執行中止の嘆願書だったり、ライス国務長官宛のイスラエルに対する圧力要請 (ガザ国境を封鎖しているため学生が留学することもままならない) だったりします。レターの効力のほどはわかりませんが、これが世論を動かし、時に政府を動かすことがあるのも事実。ヘタをしたら日本政府より影響力があるかもしれません。

さて、そんなレターのうち、スリランカ政府に対する苦情がありました。中東地域で働くスリランカ人 (主にメイド) が極めて劣悪な条件下で酷使されているため、スリランカ政府から各国政府に対し強い態度をもって改善要求をしろと書いてあります。スリランカ政府にしてみたら、「だったら先方に文句を言ってよ」 と言いたいところでしょう。とんだとばっちりです。

フィリピンやバングラデシュもそうですが、数十万人単位、場合によっては一国で100万人もの労働者を受け入れてくれる中東の大国 (金満国) に対して、なかなか強いことは言えません。もし先方政府の機嫌をそこねて、「おたくの国の労働者を来年からは減らす」 とでも言われたら、外貨送金は減るし国内の失業率は上がるしで、まったくいいことがありません。立場的にはどうしても弱くなってしまいます。

ちなみに、HRWがスリランカ人メイド (サウジアラビア、クウェート、レバノン、UAEで働く人たち) が虐待されているとして実態調査を行った報告書に載っていた声は次のようなものです。

「何ヶ月も給料をもらっていない」
「給料をもらったのは結局帰国直前、しかも小切手」
「3年働いたのに1年分しか給料をくれない」
「1日20時間以上働かされる」
「食事をもらえない」
「常にののしられ人間的に接してもらえない」
「外部からの電話を取り次いでもらえない」
「外出や電話が許されない」
「手紙を出させてもらえない」
「個室がなく階段の下で寝かされる」
「物を盗んでいないか常に監視されている」
「テレビやラジオを使わせてもらえない」
「ひどい暴力を受ける」※女主人からという回答が多い
「セクハラを受ける」
「パスポートを取られているので帰国したくてもできない」
「少しは休ませてと懇願したら、"お前は私の靴だ、靴が休むか?" と言われた」
「誰一人として働き続けたいと考える者はいない、みんな国に帰りたがっている」

特に給料未払いの話はリヤドで生活していても何かと耳に入ってくるので、聞く度にこちらも胸が痛みます。スリランカ人メイドの場合、月給の相場は100USドル程度なので、実質労働時間の時給にしたら20円くらい。湾岸諸国の人にとってはたいした金額ではないのですが、お金にシビアというか、支払いに対して最大限の効果を求めるというか、とにかく金払いはあまり良くないようですね。ただし、給料未払いを経験した人は全体の20%とのことですから、想像していたよりはずっと少なかったです。

これまでの経験から、給料未払い (遅配) はほぼ100%の人に起こっているようなイメージでした。アジア各国から来ているワーカーたちも、他人の関心を買うため被害者として自分をアピールしているのかも、なんていう考え方はちょっと意地悪すぎるかな。でも、彼らもホームシックや環境の変化、言葉が通じないストレスで相当まいっているだろうし、サウジ人の悪口を言って少しでも気が晴れるなら、こちらも素直につきあってあげようという気持ちでいつも聞いています。弱者にあえてムチ打つ必要もないし。

ただ、それにしても一番の問題点は、やはりサウジ人が使用人に対して「優しくない」ことだと思います。根は悪い人たちじゃないし、ある意味とても正直というか、それだけにストレートにダメなものはダメと厳しい態度で使用人に接します。出稼ぎのメイドといったって、プロの家政婦などほんのわずかでしょう。大部分は社会経験も少ない普通の女の子です (空港の入国審査でメイドさんの集団を見るにつけつくづくそう思います)。特に女主人 (母親) が時々はメイドに優しい言葉をかけてあげるだけで、だいぶ関係は良くなると思うのですが。

なお、サウジアラビアについては今年になって外国人労働者を保護するシステムが立ち上がり、状況は改善の兆しが見えています。

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