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2008年6月17日 (火)

Eラーニングは万能か?

サウジアラビア現地紙に、サウジアラビアの学校教育に関する社説が載っていました。記者は、現在の学校教育のあり方が間違っているのではないかと問いかけています。曰く、いつになったら教員が本当の意味での教育をするようになるのか、いつになったら学生がまじめに勉強するようになるのか、いつになったら学生の親がもっと学校教育に関心を持ってくれるのか、いつになったら学校が社会に貢献できるようになるのか、いつになったら学校が次世代の教育者を生み出すことができるのか、などなど。

ここまではなかなか良いことを考えているなと思えるのですが、この記者は、これら諸問題の解決策として、先頃サウジアラビア政府が計画を発表した「Eラーニング」が最善策であると主張しています。「それはどうかなぁ」と思わずにはいられませんが、とりあえずこの記者のアイデアをまとめ書きしてみます。

①Eラーニングにより、若者は学校の授業以外に様々な教育コンテンツを無料で自由に利用することができる。
②若者は学校の先生以外からも知識を得ることができる。
③インターネットは膨大な情報が記されたノートブックであり、もはや紙切れに文章を書きつける時代ではない。
④ただしその情報が正しいかどうか自ら吟味しなければならない。また、きちんと目的やゴールを持って情報検索をする必要がある。

まぁ、政府の検閲もあって、インターネット後進国と言わざるを得ないサウジアラビアでは、コンピューターやインターネットがすべてを解決する魔法の杖に見えるのはわからなくもないのですが、ちょっとなんだかなぁというのが正直な感想です。コンピュータの画面で見た情報は自分の手で書いた情報よりも記憶に残りにくいと思うし、いつでも見られるから逆に憶える必要がありません。

また、インターネットは情報が氾濫しすぎていて、正しい情報だけを見ることは不可能です。そもそも正しさなんて視点によって180度変化しますから (例えば9.11)、よほど自分がしっかりしていないと情報に翻弄されるのがおちです。少なくとも、子供には扱いが難しいと言わざるを得ません。

この記者は、21世紀の社会では 「受容性、探求、参加、チームワーク」 という成功をもたらすための4つの基礎的な要因があるとしています。例として、プロクター&ギャンブル社やボーイング社が、こうしてコスト削減や効率促進を成し得たというのですが、そのためには、Eラーニングの導入が必要であると述べています (←なんか無理矢理?)。Eラーニングにより若者は創造力が刺激されスキルを高めるであろうし、これによって伝統的で閉鎖的な教育手法は終わりを迎えるであろう、と社説をしめくくっています。

サウジの初等教育についてはよく知りませんが、大学になると、実際に教鞭をとる教員の9割がたは外国人 (エジプトなど近隣アラブ諸国が多い) です。博士号を持った教授といえど、サウジアラビアよりもずっと低所得国からの「出稼ぎ労働者」ですから、授業を受ける学生との関係においても、いわゆる「先生と生徒」という不文律は成立しにくいのが現状のようです。学生が先生を尊敬できない以上、学業に身が入るとは思えませんし、成績が悪くても 「あのエジプト人教員の教え方が悪い」 と言っていれば親も大学のサウジ人マネージメントスタッフも納得してしまうようなところがあります。もしかしたら外国人教員の方も、サウジ人学生に対して親身に授業を行っていないという可能性も否定できません (イヤになる気持ちもわかりますが)。

もちろん中にはまじめな学生もいて、先生の国籍がどこだろうと関係なく授業に専念する者もいますが、そういう態度を周りの悪友たちが茶化すのもよくある日常の風景です。実は社会全体にこういった傾向があり、サウジアラビアはもう外国人労働者抜きには成立し得ない国なのですが、国籍を問わず誰とでも誠意を持って付き合うサウジ人となると、実際ほとんどいないのではないでしょうか。サウジアラビア人と外国人はあくまで 「雇用主と使用人」 という関係性であって、そこに友情が生まれる余地はありません。(これは大きなテーマなのでまたいつか掘り下げてみたいと思います)

そういった意味では、Eラーニングであれば教える側の国籍を気にすることなく勉強できます。また、学校では勉強に集中できない環境であっても、自宅で好きなだけ知識を得ることができます。うがった見方をすれば、「勉強はしたいけど格下の外国人には習いたくない」 というサウジアラビア人の心理を汲んだうえで、このEラーニング計画が出てきたのかもしれません。もしそうなら策士ですね。尊敬に値します。

いずれにしても、インターネットを含むEラーニングはそれだけですべて解決するほど万能のツールではありません。そもそもサウジ人はそれを「ツール」ではなく「ゴール」だと勘違いしているふしもあります。Eラーニングはあくまで知識を習得するツールのひとつであり、それを使いこなせるかどうかは、やはり誰か賢い人のサポートが必要です。今のところ、その誰かがみんな外国人だというのが一番の悩みどころなのですが。

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