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2008年7月 4日 (金)

ミスヤール婚 (通い婚)

ミスヤールはアラビア半島の方言で通うとか訪問を表す単語です。ミスヤール婚は妻が夫と同居しない結婚形態で、他にも結納金品を求めないなど、通常の婚姻にある妻の権利はほとんどありません。数年前、マッカのイスラム法学会がミスヤール婚を合法であるとするファトワ (宗教界の公式見解) を出したのは、近年サウジアラビアで、新居の購入や高額な結納金品・婚礼資金を用意することができない男性が増えていること、それにともない独身女性が150万人に達している状況を憂慮した結果だと言われています。(クウェートやアラブ首長国連邦も似たような状況)

ところが、ミスヤール婚で結ばれたカップルは夫にとって二人目の妻であったり、80%が早期に離婚を迎えているという統計があり、男性に一時の享楽を与えているに過ぎないという批判が絶えません。夫は昼夜を問わず好きな時間に妻の元に通い、その時だけ夫婦として振る舞うわけですから、その妻は 「都合の良い女」 として世間から偏見の目で見られることを覚悟しなければなりません。しかし、ミスヤール婚には一定の条件があり、これらを満たせばイスラム法的には完全に合法です。

1. 男性と女性の合意
2. 女性のガーディアンの同意
3. 二人の証人
4. 結婚介添人 (公職) による婚礼儀式

ミスヤール婚では妻の権利が著しく低いため、結婚とはいえ通常の安定した結婚生活は期待できません。離婚も多いとなれば、女性にとってどの程度メリットがあるかははなはだ疑問です。唯一、合法的に子をもうけることができるというだけでしょうか。あるいは、アラブ女性は結婚適齢期を逸するとたちまち結婚の機会が激減するため、そういった年輩の女性 (といってもせいぜい30代後半か40代でしょうけど) にも結婚生活を経験するチャンスが増えるということなんでしょうか。

シーア派にもムトゥア婚というまさに 「一夜限りの契り」 を合法化する都合の良い婚姻法がありますが (歴史的にはそれが必要だった時期もあるんでしょうけど)、今、スンニー派にとってはミスヤール婚がそれと同列になってしまう危険性を秘めています。旅先のアバンチュールを気兼ねなく謳歌できる抜け道ができたわけですから (実際そうなのかはわかりませんし、該当するにしてもごくごく一部だと信じていますけど)。また、斡旋業者が出始めているという噂もあります。

サウジアラビアのイスラム法学者も、ミスヤール婚は違法ではないけれど望ましい形ではないと論じる者が多く、中にはコーランの次の一節を引用し、ミスヤール婚はイスラムの精神からは明らかに違法であると断じる者もいます。

■ビザンチン章 21
また彼があなたがた自身から、
あなたがたのために配偶を創られたのは、
彼の印のひとつである。
あなたがたは彼女らによって安らぎを得るよう、
あなたがたの間に愛と情けの念を植え付けられる。
本当にその中には、
考え深い者への印がある。

つまり、愛情のない結婚生活はありえないわけです。いいこと言ってんですけどね、コーランは。それにくらべて人間てのはホントに…。

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