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2008年9月 1日 (月)

サウジアラビアで働くメイド

オイルマネーで潤うサウジアラビアなど湾岸産油国は、アジア諸国にとっては絶好の出稼ぎ地です。彼らの外貨送金は、本国にとっても無視できないどころかGDPの大きな部分を占めるまでになっています。例えば、湾岸産油国も含め世界中で働くフィリピン人は、2006年に合計152億ドルの外貨を本国に送金したそうです。これはフィリピンのGDPの13%にあたります。

世界一外貨送金が行われている国はアメリカですが、2番目に多いのはサウジアラビアです。2006年にはサウジアラビアのGDPの5%にあたる156億ドルが、様々な国に向けて送金されました。

統計の出処によって数値はまちまちで、サウジアラビアで働く外国人ワーカーは600万人とも800万人とも言われていますが、サウジアラビア政府の発表を信じれば、サウジアラビアの人口2400万人のうち、自国人は1750万人、外国人は650万人です。だいたい4人に1人が外国人ということになります。

100万人以上のワーカーを送っているのはインドネシア、インド、フィリピン。次いでスリランカが60万人。彼らの仕事は医療や建設の現場、そして住み込みのメイドや運転手がほとんどを占めます。もちろん、いわゆるビジネスマンという人たちもいます。

会社所属ではなく一般家庭で働く外国人ワーカーの数を正確に把握することは難しいようですが、サウジアラビア政府は毎月概ね2万人が就労ビザを得て入国していると発表しています。一方、インドネシア大使館は、インドネシア人だけでも毎月1万5000人が来サしていると言い、またサウジ人材派遣業組合は毎月3万から4万人が来サしていると推計しています。

サウジアラビア労働省によれば、一般家庭で働く外国人ワーカー120万人のうち、48万人が住み込みのメイドとして登録されているそうです (他は運転手、庭師)。しかし、メイドに限ってもインドネシア当局は60万人、スリランカは27万5000人、フィリピンは20万人を派遣していると推計していますから、主要な国だけでも、実際にはサウジ政府の発表を大幅に上回るメイドが存在していると考えられます。

サウジアラビア政府は昨年と今年、ネパールおよびベトナムとも人材派遣協定を結んだので、今後はこの2ヶ国からもメイドの派遣が増える見込みです。その他、メイドとして働くワーカーの国籍は、インド、バングラデシュ、エチオピア、エリトリアなど。つい最近、エチオピアから10万人単位のメイドが来るという新聞記事もありました。

アジア人のメイドに対する雇用主からの虐待 (給与不払い、長時間労働、監禁、暴力、セクハラ) については巷でよく語られるところですが、一方で、メイドの中にはしたたかな人たちもいるようです。今朝の Arab News によると、ラマダン中はどの家庭も料理や客人の接待に忙しく、なんとしても追加のメイドを雇いたいという人が増えます。この需要に、違法なルートで応えるメイドがいるわけです。

違法とはつまり、高い給料を条件に、現在の雇用主から逃亡し、新しい雇用主のもとで働くことです。中間には当然ブローカーがいます。今年の相場は1ヶ月2000リヤル (6万円)、プラス週末の休日という、アジア人メイドとしては破格の条件です。このうちブローカーの手取りは300リヤル (9000円) 程度。年に1回のことなので、サウジ人もこのくらいは出すようです。ラマダンが終われば、またブローカーを介して他の家庭に行くことになります。当然、それだけの技術 (アラビア語、料理) が必要ですが。

今年は学校もまだ夏休みなので、例年にも増して客人が増えると予想している人は多く、普段は料理をしないメイドに、給料を1500リヤルに増やすからラマダン中は料理を手伝うよう言ったところ、「仕事があまりにきつかったら出て行くからね」 とメイドにすごまれてしまった人もいるそうです。

アジア人メイドの当初の給料は数百リヤル (1~2万円) ですが、雇用主は人材派遣会社に5000~9000リヤル (1300~2400ドル) の手数料を払うこともあって、ついメイドを過酷に働かせたり、逃げないよう給料を払わなかったり部屋に閉じこめたりすることもあるようです。言葉が通じないストレスやあまりにも厳しいイスラムの戒律から、ノイローゼに陥るメイドも少なくありません。メイドが 「虐待されている」 と感じるのは、主にこの最初の期間ではないかと想像します (本当の虐待もあり得るとは思いますが)。

しかし、何年かサウジアラビア人の家庭で働き、ある程度アラビア語とアラブ料理ができるようになると、今度は高級・好待遇を求め、雇用主のもとを逃げるメイドが出てきます。Arab News のインタビューを受けたあるブローカーは、友人を通じて複数のメイドの携帯電話番号を入手し、常にコンタクトをとっていると答えていました。それだけ需要があるということです。結局、どの世界も腕を磨けばいくらでも稼げるんですね。法律は守らなくちゃいけませんけど。

サウジアラビア人と話をしていると、奥さんが料理をしないというぼやきをよく聞きます。いまの20~30代の多くは、生まれた時から料理、洗濯、掃除はほとんどすべて外国人のメイドがやってくれていますから、確かによほど好きでないと料理上手にはならないと思います。中には、奥さんが料理をしてくれるのだけどメイドの料理の方がはるかにおいしいということを何年も言い出せない、という悩み (?) を訴える人もいました。

昨年からの急激なインフレで、サウジアラビアは出稼ぎ地として以前ほど魅力的ではないと考える人が半数を占めるようになったという報道がありました。もし、50万人とも100万人とも言われるメイドがすべて引き上げてしまったら、サウジ人の家庭の食事はどうなってしまうのでしょう。さらに、外食産業もすべて外国人ワーカーに依存していることを考えると、サウジアラビア政府が進めるサウダイゼーション (外国人ワーカーをサウジ人に切り替えていく計画) でもっとも必要な職種は、実はコックなんじゃないかと考えたりしています。

明るい家庭にしたいならエジプト人の花嫁を、食事を楽しみたいならレバノン人の花嫁を、有り余るお金を使いたいならサウジアラビア人の花嫁をもらえ、なんていう話を聞いたことがあります。ちょっとサウジ女性の立場がないなぁ。

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