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2008年10月11日 (土)

したたかなサウジ女性

イスラム教のミスヤール婚についてはこれまでにも何度か書きました。ミスヤール婚の最大の意義は、婚期を逃してしまった女性たちに結婚生活の喜びを与えるチャンスを増やすことにあります。一夫多妻が認められているサウジアラビアですが、伝統的なスタイルの結婚を行う場合、高額な結納金品を男性から女性に贈らなければならず、庶民にとっては妻ひとり娶るのもなかなか大変なのが実情です。また、子どもはできるだけたくさんほしいと望む社会的風潮がありますから、妻は若ければ若いほどいいというのが男性側の本音です。なので、女性が一度婚期を逃してしまうと、年を追うごとにもらい手を見つけることが難しくなっていきます。

ミスヤール婚は結納金もかなり控えめで、妻には夫と同居する権利もなく夫は好きな時に妻の家に通えばよいのですから、男性側の負担はかなり軽く、確かに結婚の敷居は低いと言えます。ただ、ミスヤール婚による第一夫人という例はあまりなく、ほとんどは第二夫人かそれ以降になります。伝統的な結婚の場合、二人目の妻を娶る場合は第一夫人の許可が必要で、かつ第一夫人並みの待遇を保証しなければなりませんが、ミスヤール婚については、夫が第一夫人に内緒で結婚することもしばしばだそうです。そもそも自由恋愛のないサウジアラビアですが、特にミスヤール婚は夫婦間に愛情が育つ要因が希薄で、結果、ミスヤール婚の離婚率はとても高いと言われています。

サウジ女性に新たな権利を与えているような、むしろ女性蔑視を推し進めているような、なんとも微妙なミスヤール婚ですが、最近では逆にこの制度を有効活用しているしたたかな女性も出てきているそうです。スィハーム (ニックネーム/アラビア語で「矢」の意味) もそんな女性のひとりで、これまでに1度の伝統的結婚 (その後夫の暴力が原因で離婚)、5度のミスヤール婚をしてきました。スィハームに言わせれば、ある程度裕福で、恐妻家の男性が彼女のターゲット (カモ) です。ミスヤール婚を希望している男性の情報が入ると、まずその点をよく調べ、結納金については3万リヤル (90万円) 要求するそうです。決して少なくない金額ですが、伝統的結婚に比べればずいぶん少額です。

これまでミスヤール婚で結婚した彼女の夫たちはいずれも、彼女との同居を望みませんでした。彼女は結婚に先立ち、結納金以外には生活費など一切不要という約束を交わしましたが、週に1、2回通ってくる夫に対して、彼女はたびたび5000~7000リヤル (15~21万円) のお金を要求しました。お金を払わない時は家に上げなかったそうです。ミスヤール婚では、女性は男性に対して何ひとつ有利なことはないと考えられていますが、スィハームはそんな男女の立場を逆転してみせました。夫の不満がつのり、そのミスヤール婚がそろそろ潮時だと判断すると、今度は第一夫人に訴えるとほのめかし、有利な条件で離婚することができたそうです。

そうして、離婚後4ヶ月と10日の再婚禁止期間をおいて、次なるターゲットへのアプローチを繰り返してきました。男性にもどこか後ろめたい部分があったのでしょう。これまでミスヤール婚を正式に役所に届けようと言う夫はいなかったそうです。つまり、公式には彼女の結婚経験は1度だけであり、もちろん、新たな結婚相手にも過去のミスヤール婚のことは一切話しません。だからこそこの 「ビジネス」 が続けられるわけです。もし誰かひとりでも、ミスヤール婚ではあっても彼女に優しく愛情をもって接していれば、彼女もこんな生活を続けることはなかったかもしれません。

スィハームがなぜこのようなビジネスを始めたのか。それは、彼女と同じ境遇の女性 (夫の暴力に耐えかね離婚した女性) に出会い、ミスヤール婚を重ねて生きていくノウハウを教わったからです。サウジアラビア国内には、彼女のような女性がまだまだいるそうです。普通とは言い難い人生ですが、誰も彼女たちを責めることはできないように思います。いつか彼女たちにも、平穏で安定した生活が訪れることを願ってやみません。

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コメント

平穏で安定した生活は無理でしょうね
これでムスリマーとは信じがたい

投稿: | 2008年10月26日 (日) 03時19分

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