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2008年11月30日 (日)

サウジアラビアのHIV/AIDS

12月1日は世界エイズデーだそうです。国連の報告書によれば中東・北アフリカ地域のHIV感染者は38万人ですが、8割方はスーダン、次いでモロッコが占めています。アラビア半島の各国データはほとんど不明になっていました。サウジアラビアでは1984年に初のエイズ患者が認められて以来、その後は長らくデータが発表されませんでした。社会的にも、エイズについて語ることはタブーであったようです。

インターネットで関連データを検索したところ、2006年8月のニューヨークタイムズ紙の記事、そしてその数ヶ月後に出たサウジアラビア現地紙の記事が見つかりました。それによると、その時点でのサウジアラビアのHIV感染者/AIDS患者は10,120人 (2003年:6,700人、2004年:7,800人)。うち7,804人は外国人労働者、サウジ人は2,316人 (23%) でした。しかし、多くの医療関係者がこの数値を極めて低いものとみなしており、実際には8万人はいるだろうと推察されていました。

この数年前からサウジ政府は本格的に患者の支援を始め、治療と薬は無料、患者がエイズの治療を受けていることも外部に知られないよう特別な配慮をしてきました。しかしこの特別措置も対象はサウジ人だけで、外国人は感染が見つかるとほとんどは収監され、すぐに強制送還されてしまうそうです。

ニューヨークタイムズ紙のインタビューに答えていたのは、サウジ人エイズ患者のファイサル。彼はもともとゲイで、アメリカ留学中に男友達との交友関係を謳歌した結果、帰国後の血液検査でHIV陽性が発覚 (就職のために検査が必要だった)、それから絶望的な日々を送っています。

ファイサルによれば、医療に関するサウジアラビア政府の支援は感謝に値するものの、国民に対するHIV/AIDSの啓蒙がまったく行われていないため、エイズ患者に対する人間性の否定は激しく、社会活動にまったく参加できない状態だといいます。特にゲイに対する風当たりはいっそう激しいそうです。なお、インターネットでゲイのチャットルームにログインしても、エイズであることを告白すると必ず嫌悪感を示されすぐに退出を迫られるそうで、周囲に誰ひとり味方がいない状態は、彼をさらに深い闇に突き落としています。

超保守的なサウジアラビアでは、そもそも性について語ることが厳しく禁止されています (学校でも)。エイズの啓蒙をしようにも、その主な感染経路と防御手段を詳細に解説することは、なかなか難しいようです。単に 「神を恐れよ」 などという表現に終始しかねません。もちろん、男女が結婚前に性交渉を持つなどサウジ国内ではあり得ない犯罪的行為ですし (というか犯罪です)、「海外でする時は気をつけろよ」 などと気軽にアドバイスするわけにもいきません。犯罪行為を助長しているようなものですから。

これが、アフリカのように周囲にエイズ患者がいるのが当たり前になってくると、幸か不幸か社会的な風当たりもそれほど強くなくなり、仕事も普通にできるようになります。実際、普段の生活ではHIVが他者に感染することはありません。エチオピアでも、そんな感じのスタッフが何人かいましたが、普段の接触で気にしたことはほとんどありませんでした (任期中に亡くなった人もいます)。

サウジアラビアなど保守的な国では、エイズそのものより感染に至った行為の方を強く非難されるのでしょうね。数値の上でも、サウジアラビアではもはやエイズは無視できないものになっています。社会がどのようにエイズを受け入れるのか、どのようにエイズ患者と接していくのか、国民の合意形成が必要になっていると思います。相当いろいろなタブーをこじ開けなければならないと思いますが、何より国民のためですから、宗教界も重い腰を上げてほしいですね。

ちなみに、「アラブの男色って歴史があるよなぁ」 と思いつつインターネットで検索したところ、その道のプロみたいな方のブログにあたりました。中東の経験もあってイスラムについても深く洞察しています。興味のある方はこちらにどうぞ。いやぁ、別世界…。

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コメント

サウジアラビアの内部事情には驚くばかりです。

イスラム教徒と言えど、性的快楽の誘惑には弱いものです。
だからこそ締め付けるだけでなく、もっと柔軟に打開策を打ち出せるリーダーが必要なんでしょうけれど、
この様子だと難しそうですね。(アッラーフアーラム)

投稿: toto | 2008年11月30日 (日) 20時16分

エチオピアもそうでしたが、サウジアラビアでもエイズは神が下した天罰という考え方が根強くあるようです。母子感染や薬害エイズなど不可抗力のケースもたくさんあるんですけどね。

今年のハッジはHIV感染者のグループをあえて受け入れるそうです。神に祈り、ひたすら悔い改めなさいということでしょうか。

投稿: shukran | 2008年12月 1日 (月) 06時48分

自分は癌だ!と、勘違いしたことがあります。
頭のなか真っ白、髪の毛総立ち(の様な感覚)苦しくて息もできませんでした。

不治の病に冒された人々。
どんなに苦しいことでしょう。

死に直面して、初めて神に思いをはせるイスラム教徒もいることでしょう。
神が彼らの悔悟を受け入れ、来世で楽園に入らせ賜う
ことを祈らずにはいられません。

投稿: toto | 2008年12月 2日 (火) 05時39分

天国はあると思いたいです。世界は悲惨な人生で満ちあふれていますから。

投稿: shukran | 2008年12月 3日 (水) 23時41分

ありますとも!でないとやってられませんっ!

投稿: toto | 2008年12月 4日 (木) 19時21分

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