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2008年11月24日 (月)

故郷を遠く離れて

ジェッダの町で、ひとりのタクシー運転手に出会いました。名前はカーシム。イスラマバード近郊の小さな村で、9人兄弟に囲まれて育ちました。当時、皆がそうであったように彼の家庭も貧しく、父親は子どもたちの教育にお金をかけることができませんでした。カーシムは高校を出て数年間は地元で働きましたが、なかなか安定した収入が得られず、将来を考えた末サウジアラビアに出稼ぎに行くことを決心しました。もう30年も前の話です。

現在、カーシムはふたりの子どもの父親です。パキスタンに帰るのは年に1回。これで結婚もできたし子どもも授かりました。「家族と離れて寂しくないの?」 そうたずねると、ここ数年携帯電話代が急激に安くなったのでパキスタンの家族には毎日電話をしている、だから全然寂しさは感じない、と言っていました。でも、逆に家族の声を聞けば聞くほど会いたくなるんじゃないでしょうか。

カーシムの上の子は、今年大学に入学しました。彼は自分がかなえられなかった夢を息子に託しています。いい大学を出て、パキスタン国内でいい職を見つけ、結婚しそして家族が一緒に暮らすことです。「いつまでジェッダで働くの?」 この問いには、はっきりした返事はなくただ困ったように微笑みを返してくるだけでした。彼だって本当はあと4年の辛抱だと思いたいのでしょうが、息子が勉強を続けたいと言う限り、きっとこの先もひたすら働き仕送りを続けるのでしょう。

彼のタクシーに乗って市内の観光を始めたのが夕方6時。ダウンタウンを10分ほど歩いてまわった他は、コルニーシュ (海岸通り) を走りながらずっと彼の身の上話に耳を傾けていました。こちらもサウジアラビアや日本の生活のことをぽつぽつと話しながら、気がつけば時計の針は夜8時をさしていました。最後は一緒にパキスタン料理を食べ、もともとこちらが招待するからと言って連れて行ってもらったのに、結局彼が全額払ってくれました。かなり心苦しかったのですが、店員や常連客から父親のように慕われている彼に、花を持たせてあげようと自分を納得させました。

カーシムと別れた後ホテルの部屋に戻ると、あらためて彼との会話のひと言ひと言が思い出されました。そして故郷の家族のことを嬉しそうに話すカーシムの笑顔に、なんとも言えない切なさがこみ上げてきました。家族を大切に思うが故、家族の元を離れひとり海外で働くカーシムの姿には、「幸せってなんだっけ?」 と思わずにはいられませんでした。

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コメント

わたしも、切ないです。。。

投稿: toto | 2008年11月29日 (土) 21時07分

この晩はずっと心の中で「うーさーぎー追ーいし、かーのーやーまー」と歌っていました。

投稿: shukran | 2008年11月30日 (日) 07時02分

故郷といえば、山ですよね。。。懐かしいな。。。
ウサギといえば、やっぱりモロヘイヤですね。。。
かわいいウサちゃんには悪いけど。。。

投稿: toto | 2008年11月30日 (日) 19時43分

おいしいんですよね、ウサギ入りのモロヘイヤスープ。かわいそうなんですけど。愛読書は「ウォーターシップダウンのうさぎたち」だというのに…。

投稿: shukran | 2008年12月 1日 (月) 06時38分

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