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2008年12月29日 (月)

サウジアラビア-石油王国の素顔

これまでも噂には聞いていたのですが、表題にあるドキュメンタリー番組をようやくニコニコ動画で見つけました。ギリシャのテレビ局が2006年に制作したもので、2007年にNHK-BSで紹介されたようです。サウジアラビアで生活した人なら、「よくぞここまで」 と誰もが感心するほど突っ込んだ取材をしています。時間は50分とかなりの長編ですが、必見です。なお、ニコニコ動画を視聴するためにはアカウントが必要です (登録無料)。

*NHKの番組説明
*ニコニコ動画リンク

【番組の流れ】
①プロローグ
マジュリス (国民の国王への直接の陳情の場)。対話はサウジアラビア人の基本姿勢。建国の略史。近代化を望むリベラル派と改革に反対する保守派の対立。

②今どきの若者
サウジアラビアは20世紀に最も発展した国のひとつ。週末の夜、若者は女性との出会いを求めて町に繰り出す。車の窓に携帯電話の番号を大きく張り出す。万が一コンタクトをとれてもデートは御法度。宗教警察に見つかれば即逮捕、鞭打ち。失業率20%。外国人労働者550万人。労働力のサウダイゼーション (サウジ人化) を進めたい政府。仕事を嫌う若者。サウジ人スタッフだけのカフェを紹介。娯楽がない。衛星放送は秘かな楽しみ。ビルのオーナーに内緒で衛星アンテナを設置する人が多い。

③サウド家と保守派
アブドルアジズ (後の初代国王) は復古主義的イスラム改革運動を進めるワッハーブ派の民兵 (イフワーン) の力を借りてアラビア半島内で勢力を延ばす。両者に益。1932年、サウジアラビア王国 (サウド家のアラビア王国という意味) 建国。サウド家が王家たる根拠はワッハーブ派のお墨付きがあってこそ。当初から政治と宗教を分離させることは不可能だった。今でも政策決定には宗教界の同意が必要。石油が出て以降、近代化を進め国を富ませたいサウド家に対し、欧米の石油メジャー (=異教徒) との接触を快く思わない保守派との対立が浮き彫りに。1979年、急進派 (イフワーン) の反乱。18日間にわたるモスク占拠事件。逮捕されたイフワーンは処刑。サウド家の腐敗が保守派から糾弾され、サウド家は保守派に対するアピールとして宗教的締め付けを強める。結果、女性の自由が奪われた。

④女性と人権
湾岸危機の最中、リヤド市内で車を運転した女性グループメンバーへのインタビュー。女性たちはほどなく逮捕されるがすぐに釈放。一時は職を失うが国王に嘆願し職場に復帰。コーランに女性が車を運転してはいけないとは書かれていない。当時は車など存在しなかったから。当時の女性はラクダに乗っていた。女性が運転しないのは習慣であって教義ではない。他国のイスラム教徒の女性は運転している。女性は教育やビジネスなどあらゆる場で差別を受けている。法律上も男性がいなければ何もできない半人前。麻薬なども含めてすべて自由な国などない。自由には制限があるもの。改革を求め国王に書簡を送った作家グループが逮捕される事件があった。

⑤大富豪アルワリード王子
サウジ人初の女性パイロットの雇用主は世界第4位の大富豪、アルワリード王子。リヤドのキングダムタワーのオーナー。タワー内にあるオフィスでは直属の部下のうち半分は女性。もちろんアバーヤ (黒い外套) など着ていない。アルワリード王子は砂漠の「基地」で数百人から陳情を受け付ける。お金の無心や結婚の後押しなど。金持ちは責任を果たさなければならない。

⑥首切り広場
ジェッダの首切り広場。今でも金曜日に公開処刑を行う。麻薬の売人、婦女暴行犯、殺人犯は死刑。誤って人を殺した場合、遺族が広場に呼ばれ処刑の直前まで犯人を許すかどうか問われる。許した場合、広場は歓喜に包まれる。斬首の場面。

⑦オサマ・ビンラディン
幼なじみが語るオサマのイメージ。子どもの頃はケンカの仲裁などしていた。指導者的な才能。ソ連のアフガン侵攻前から来るべき日に備え射撃練習などしていた。1979年、アフガンでジハード (聖戦) に参加。そこから性格が攻撃的になった。湾岸危機で米軍のサウジ駐留を目の当たりにし、オサマは別人のようになった。聖地から異教徒を放逐しサウド王家を転覆することを誓う。オサマに共感する若者も少なくない。アルカイダメンバーの父親へのインタビュー。9.11でアルカイダはサウド家とサウジアラビアの名声を傷つけた。

⑧エピローグ
現在のサウジアラビアは本来のイスラムの姿からはずれている。教育が二の次になっており若者は働きもせず堕落。傲慢にイスラムを押しつけるやり方は国民の反発を招き、サウド家はリベラル派への締め付けを緩めた。人はそれぞれの信条がある。近代化・西洋化に反対する人も多いが、一部の保守派が考え方を押しつけてはいけない。政治と宗教は分離されなければならない。

………本当によくぞここまで。ギリシャのテレビクルーに拍手。それにしても、リベラルに移行したくてもそれができないサウド家のジレンマがよく見て取れました。国民あっての国家ですが、今のところ、国民にしわ寄せが行ってるのかなぁ。

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コメント

見ました!これはすごいドキュメンタリーですね!!
もう一度見よっと・・・

投稿: marika | 2008年12月29日 (月) 05時59分

エジプト人の夫もサウジは重たいといいます。
王女医療ミスの制裁もこの人たちならありえるなと、、、ぐったり。

投稿: toto | 2008年12月29日 (月) 17時45分

思わず動画をダウンロードして繰り返し見ちゃいました。王様も大変だ…。

投稿: shukran | 2008年12月30日 (火) 07時20分

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