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2009年1月12日 (月)

エジプト料理/コシャリ再考

コシャリは代表的なエジプトの庶民料理です。スパゲティー、マカロニ、ご飯の三層構造になっていて、トッピングに炒めタマネギと少量の豆 (ヒヨコ豆か緑豆) をのせ、ニンニクの効いたピリ辛のトマトソースをからめて食べます。値段は50円前後から。

エジプトの職場では、他に選択肢がなくて毎日のようにコシャリを食べていました (→過去記事)。よくあれだけ食べたなぁと今更ながら思いますが、自分にとってコシャリは自身のエジプト生活を象徴する食べ物です。エジプト滞在中は、コシャリの有り様を通してエジプトという国を見ていたような気がします。

【絶望】
コシャリのレシピは思いの外スタンダードが確立されていて、どの店もほぼ同じ味。どこで食べてもまずくはないけれど、とりたてておいしくもありません。エジプト人は、なぜコシャリの具や味を変えようと思わないのでしょう。他店よりおいしいコシャリを作れば確実に儲かるはずなのに、味の改革を試みる者はまったく出てきません。まさに停滞するエジプトを象徴しているのではないでしょうか。

もちろん、明らかに他店より繁盛しているコシャリ屋もあります。そういったお店にも実際に行きましたが、基本形はすべて同じ。それでもやはりおいしいと感じるのは、まず油が新鮮なこと。案外油を多く使う料理なので、油が古いと臭くて一気に食欲が落ちます。炒めタマネギも作り置きしておくと酸化して胸焼けがしますが、その店はひたすら香ばしさが際だっていました。トマトソースもフレッシュ。何よりパスタとご飯がまったく臭くありませんでした。普通の材料を普通に調理すればこうやっておいしいコシャリができあがるのに、そんな当たり前のことを怠っている店がほとんどだということなのでしょう。エジプト社会全体にプロ意識というものが欠如しており、そのひとつの事例がコシャリだと思います。

その人気店のコシャリがおいしかったもうひとつの理由は、砂がまじっていなかったことです。アフリカ随一の大都市カイロは、大気中に砂、埃、NOxなどが大量に浮遊しています。ハムシーン (50日続くという春先の砂嵐) の季節には、家の窓を締め切っていても30分ほどでテーブルにうっすらと砂が降り積もりますから、客の出入りの多いレストランではなおさらです。コシャリは客から見えるように大鍋のフタをとって山盛りにされていますから、回転が悪いと客に出されたコシャリに微細な砂埃が入るのは当然。それが食べている時に口の中でジャリッとなるわけです。これは本当に気分が悪い。コシャリだけでなくシャワルマもモロヘイヤスープも、あらゆる料理に砂が入っていたような気がしますが、当のエジプト人は砂くらいまったく気にしません。こんな細かいこと、いちいち気にしていたらエジプト (カイロ) では生きていけないからです。でもいろいろな意味で、コシャリの砂を気にしない人がエンジニアにはなれないと思います。

【希望】
コシャリはきちんと作ればそれだけでも十分いけます。でも、たとえばトマトソースの代わりにもっと味の違うソースをそろえられれば、他店との差別化、味の向上、リピーターの増加、料金の上乗せがあっという間に実現すると信じています。ミートソース、ビーフシチュー、シーフードの煮込み、チーズソース、カレーソース、アンチョビソース、クリームシチュー、モロヘイヤ、バミヤ (オクラのトマトソース煮込み) などなど、汁っぽいものならなんでも合いそうです。グリーンカレーをかければタイ風、甘辛のすき焼きをかければ和風に早変わり。トリュフとは言わないけれどエジプト名産のカラスミを何切れかのせたら、50円のコシャリが500円で売れるでしょう。もともとコシャリは外国人旅行者にも人気がある料理ですから、毎年数百万人訪れる外国人向けの新しいコシャリを作らない手はありません。パスタの形をかわいいものに変えるのもいいですね。

コシャリという素性の良い料理には、大きなビジネスチャンスが秘められています。それに気付かず、あまりおいしくもないコシャリを文句も言わずもくもくと食べ続けていたエジプト人を、当時はかなりイライラしながら見ていました。新しい時代には、既成概念を打ち破る新しい味の出現が必要なのではないでしょうか。コシャリは十分そのポテンシャルをもっていると思うのですが。

そんなわけで、コシャリに対するいろいろな気持ちを抱きつつ、リヤドのフィシャーウィーレストランで9年ぶりにコシャリを買って食べました。レストランの前に大きく掲げられた、「コシャリ/テイクアウトオンリー」 の旗をウンウンとうなずきながら眺めた後、奥の店員に敬意を表してエジプト方言で 「アーイズ・コシャリ (コシャリください)」 と言って。

503koshari

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コメント

コシャリ、私もよく食べました。でも夏に食べるといつもお腹を壊しましたが・・。エジプト人元婚約者もしかり・・。

投稿: marika | 2009年1月13日 (火) 19時49分

朝大量に茹でて一日売るわけですから、特に夏場はやばいですよね。まだまだコシャリは改善できる点が多いなぁ。エジプトでコシャリビジネス立ち上げようかな。

投稿: shukran | 2009年1月13日 (火) 21時00分

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