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2009年2月 4日 (水)

アラブと詩歌

近頃サウジアラビアで行われている詩歌コンテストが、グランドムフティ (イスラム最高指導者) アブドゥルアジズ師の怒りをかっています。師は、金曜礼拝の席で次のように語っています。

「これらのコンテストはジャーヒリーヤ時代 (イスラム勃興以前の無明時代) の所業と同じである。人々の心の奥底に隠れた憎悪を感じる。これは子どもたちの心に、大人に対する不信感を植え付けるだろうし、あるいは部族間の不和を引き起こしかねない。つまり、こんなコンテストはやらない方がいいのだ。衛星放送で流すなど言語道断である」

アラビア半島の国々ではこの3年間で衛星放送局が乱立していますが (メジャーなもので15局)、こういった詩歌コンテストはそんな放送局が主催しています。応募されるほとんどの詩は、各部族のプライドや栄光を自慢げに謳ったものだそうです。優勝作品を決める一般投票は携帯電話のショートメッセージで募られるため、詩の応募者が親類縁者にさかんに投票を促すようです。何しろ、携帯で1メッセージ送るのは4リヤル (100円) ですが、優勝賞金は少ない大会でも100万リヤル (2400万円) だそうですから。

その昔、アラビア半島の部族同士の戦いは、部族代表の詩人が対峙して相手をこき下ろす、あるいは自分の部族の素晴らしさを歌いあげる詩の内容によって勝敗が結したと言います。真剣勝負とは言っても、今から考えれば素晴らしく牧歌的ですね。そして極めて洗練された文化だったと思います。血を流すことを避け、相手が 「まいった」 と言えば最後はエールを送り互いに讃え合う。アラブにとって詩歌は文化であり芸術であり、武器でもあったわけです。

イスラム指導者はジャーヒリーヤ時代がお嫌いらしいですが、そういう文化の継承 (復活) という意味ではこの詩歌コンテストも決して悪いことではないと思います。ただ、アラビア半島の人たちは今でも国家より部族 (ファミリー) への帰属意識が強いと言われますから、部族間の融和と完全な国家統合を図りたいお上とは、やはり相容れないんでしょうか。恋愛詩を解禁すればまた別の展開で盛り上がると思いますけど、さすがにそれは無理でしょうね。アラブの詩は露骨だし。千夜一夜物語なんてその際たるもの。

■参考過去記事
*千夜一夜の美女:優しき友
*千夜一夜の美女:満月姫 (1)(2)
*千夜一夜の美女:エメラルド

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