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2020年4月 7日 (火)

タイ映画鑑賞:Midnight My Love

「Midnight My Love (原題:チューム=古臭い、時代遅れ)」は2005年のタイ映画です。映画監督や俳優業もこなす人気コメディアンのマム (Mum Jokmok/Petchtai Wongkamlao) が、携帯電話も持たずFMラジオも聴かない古臭い男バットを演じています。

“暗い過去を持ち心を閉ざした深夜タクシーの運転手バットは、車内のAMラジオから流れる古臭い歌謡曲が唯一の楽しみ。毎日同じ店で同じものをひとりで食べ、ひとりで眠る孤独な日々を過ごしていた。

ある夜、マッサージパーラーで働く美しく物静かな風俗嬢ヌアンを乗せる。ヌアンは地方の実家に仕送りするためバンコクに出てきたばかりだ。バットのカーラジオから聴こえる古い音楽も悪くないと言うヌアン。

バットはすっかり彼女を気に入り、毎晩仕事を終えたヌアンを自宅まで送るようになった。ふたりは惹かれ合うが、不器用で気持ちを言い表わせないバット。一方ヌアンには客の男 (堅気ではなさそう) から愛人の誘いがかかっていた。

バットは思う。自分とヌアンは似ていると。タクシードライバーはどこでも客の希望の場所に行くが、自分の場所には行ったことがない。風俗嬢は客が求めるまま快楽の地にいざなうが、それは決して自分が望む場所ではない。

やがて運命に翻弄され、ふたりの仲は引き裂かれていく・・・”

マム演じるバットがなんとも言えぬ味わいを出しています。あまりにもツイてないのでもはやコメディなのですが (たびたび挿入されるバットの妄想劇もそちら路線)、笑いと悲しみは紙一重なんだなとあらためて思いました。

さえない中年タクシードライバー (前科一犯バツイチ) と田舎出身の若くて美しい風俗嬢の恋など、日本では昭和の設定でしょう。しかしタイでは2005年でも、いや2020年の今だって、現実としてヌアンのように働いている女性はたくさんいます。

この映画、コメディタッチとメロドラマでオブラートに包んでいますが、意外と社会批評がするどいです。タイの階級社会、地方格差、職業の貴賎、浮気大国、深夜タクシーがはらむ危険性、ねずみ講、etc。

それからソープ嬢の仕事道具や仕事入り、ひな壇に並ぶ姿と客の品定め、個室の様子とサービス内容から、結果として女性が受ける傷 (心の傷) までさらっと見せています。2005年のリアルなバンコクの町並みと合わせ、タイの現実を垣間見ることができる貴重な映画だと思います。

日本ではDVDも販売していないようなのでネタバレを書いてしまいますが、バットはある夜タクシー強盗に襲われ入院してしまい、何日もヌアンを迎えに行くことができませんでした。

ずっとバットを待ち続けていたヌアンでしたが、やがて客の男に囲われ風俗嬢から足を洗うことに。住み始めた高層マンションではどこか落ち着かない様子のヌアンでしたが、ほどなくその男が死んでしまいます。葬儀場に行くと男の本当の家族が悲しむ姿を見せていました。

悲痛な気持ちのまま家にもどったヌアンは、ドアの隙間に血糊がついたウェディングドレスのカタログを見つけます。それは表紙に英語で"My Love"と書かれている、以前バットと一緒に見に行ったお店のものでした。それを手に泣き崩れるヌアン。

バットはまたもトラブルに巻き込まれていました。勢いで相手を殺してしまい、血だらけのまま家にもどると、ウェディングドレスのカタログを手に取り、ヌアンの家に届けたのです (マンション入口の警備員は突破)。ああ、もしこの時ヌアンが家にいたら!

マンションの警備員から逃げ切ったバットでしたが、昨晩の殺人事件の聞き込みをしていた警察官に目をつけられその場から逃走。しかし交差点で (ふと何かを思い立ち止まり) 車に轢かれ、完全に死亡フラグが立ちますが、死にませんでした。そして服役。前科二犯。

月日が流れ、バットは刑期を終えて出所。右足を引きずり、補聴器をつける身体になりましたが、たどたどしい足取りで記憶に残る場所をさまよい歩きます。あたかもそうすればまたヌアンに逢えると信じているかのように。

その後バットは家電修理の職を得ました。CDプレーヤーの具合を確認するため、ヌアンにもらった古い歌謡曲のCDを再生すると、懐かしい歌声が響きました。その音楽に気づき路上からふり向いたのは、誰あろう、ヌアンでした。

ヌアンはウェディングドレスの針子になっていました。顧客にドレスを届ける途中、渋滞に巻き込まれ、偶然、その場でタクシーを降りたのでした。白いドレスを手に、バットを見つめるヌアン。かすかに微笑みを返すバット。ふたりが見つめ合ったまま映画は幕を閉じます。

さて、ふたりは今度こそ結ばれたのでしょうか。果たしてヌアンはバットの帰りを待ち続けていたのでしょうか。そうであってもそうでなくても、少し切ない余韻が残る映画でした。ヌアン (Nune/Woranuch Bhirombhakdi)、きれいだったな。

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